今年4月に開業した「東急歌舞伎町タワー」(東京・新宿)は、地上48階の大型ビルにもかかわらず、オフィスのない異例のフロア構成となっている。その狙いはどこにあるのか。経営コンサルタントの鈴木貴博さんが読み解く――。
東急歌舞伎町タワー(=2023年4月13日、東京都新宿区)
写真=時事通信フォト
東急歌舞伎町タワー(=2023年4月13日、東京都新宿区)

最初は「一度見てみたい」人が集まるけれど…

今年4月に開業して、そのかなり不思議な振り切り度合いが話題を呼んだ東急歌舞伎町タワー。地上48階、地下5階のそのタワーはエンターテインメントに特化したビルである一方で、訪れた人にとっては「2階の屋台村以外、行く場所がない!」との声も出ています。

ビルの大半は、劇場やライブホール、プレミアム仕様の映画館など、普段行かないようなお高めのエンタメ施設と、日本人には手が届きそうにない高級ホテルが占めています。開業直後は「一度見てみたい」という需要があっても、そのうち急速に下火になるのではと心配された向きもあるかもしれません。

そんな歌舞伎町タワーの存在意義について「謎だ」と考える読者のために、東急歌舞伎町タワーのビジネスモデルは「意外とこの時代と場所に合っていて面白いのだ」という解説をしてみたいと思います。

高級ホテルが全体の6割を占める

東急歌舞伎町タワーがどういうフロア構造になっているのかを簡単におさらいしましょう。まず全体の6割を占めるのはタワー上層階にあるふたつの高級ホテルです。

最上層の「BELLUSTAR TOKYO, A Pan Pacific Hotel」は1泊8万円台からで、47階には1泊300万円超(277平米)の部屋もあるという最高級ホテル。その下にある「HOTEL GROOVE SHINJUKU, A PARKROYAL Hotel」は「エンタメ感あふれた」と表現されつつも、やはり1泊3万円台からの高級ホテルです。

ちなみに私は旅行が趣味で、そこそこお高めのホテルに泊まることが多いシニア層のひとりですが、普段の宿泊費は1泊3万円程度が目安です。この価格だと上層階のベルスターについては私はちょっと対象外かなと思いました。

さて、その下の階には映画館の「109シネマズプレミアム新宿」。これは8スクリーンのシネコンですが、価格は一般の場合4500円からの超プレミアムシート専用の映画館です。

その下には新宿ミラノ座が生まれ変わった900席の大劇場「THEATER MILANO-Za」があり、地下1階から4階まではライブハウス「Zepp Shinjuku(TOKYO)」があります。このライブハウスは深夜になると「ZEROTOKYO」というクラブ営業になるのも特徴です。映画館、劇場、ライブハウスのエンタメ施設は合計で9フロア、全体の約2割を占めます。

残る施設は5階が会員制の高級ウェルネスクラブ、4階がダンジョン攻略体験施設、3Fがナムコのゲームセンターです。1階はいくつか飲食店がありますが、ロビーや車寄せ、入場者の待機エリアの面積の方が広く、結局のところ見学に訪れた庶民がお金を落とせる場所は、メディアでよく取り上げられる2階の屋台村「新宿カブキhall~歌舞伎横丁」しかないというわけです。