明暗が分かれた都心と郊外の百貨店
新型コロナ禍も落ち着き、行楽地や商業施設への人出が回復傾向にあります。そんな中、1990年代以降苦戦が続いている百貨店業界において、伊勢丹新宿本店の2022年度の年間売上高が過去最高となる3276億円を記録しました。また阪急百貨店うめだ本店も過去最高売上高となる2611億円を達成しました。
その一方で、名古屋近郊の名鉄百貨店一宮店が2024年1月で閉店されることが発表されるなど、不採算百貨店の閉店が止まりません。同じ百貨店でどうしてこうも明暗が分かれるのでしょうか。今回は百貨店全体の実情と今後の見通しについて紹介したいと思います。
まず、基本的に全国の百貨店店舗数は減り続けており、名鉄百貨店一宮店閉店の発表でもわかるように今後も閉店は続きます。日本百貨店協会によると、全国の百貨店店舗数は181店舗(3月現在)となっており、2月比で1店舗減少していますから早晩、全国百貨店店舗数は180を割り込むことになるでしょう。
ちなみに新型コロナ禍が始まる直前の2019年12月の全国百貨店店舗数は208店舗だったので、コロナ禍があったとはいえ23年3月までで27店舗減少していることがわかります。今年中には180店舗を割り込んでも不思議ではありません。
新宿伊勢丹の好調を業界全体のものと捉えるのは間違い
今回の伊勢丹新宿本店の好調ぶりだけを切り出して「百貨店復活の可能性」を報じるメディアや識者を見かけますが、その認識は楽観的過ぎると言わねばならないでしょう。先述したように2023年に入っても全国百貨店店舗数は減少し続けています。そして2024年の名鉄百貨店一宮店閉店が発表されたように、2023年以降も店舗数の減少は続くことになります。