そもそも、百貨店全体の売上高はコロナ禍以前も年々下がり続けていました。91年に9兆7130億円を記録しましたが、バブル崩壊以降下がり始め、コロナ禍直前でインバウンド景気がピークに達していた2019年でさえ、全国百貨店売上高は前年比1.4%減の5兆7547億円というありさまでした。
コロナ禍が始まった2020年以降、年間売上高は4兆円台にまで低下しており、行動制限が解除され回復傾向が鮮明となった2022年の年間売上高は4兆9812億円にとどまりました。2023年はインバウンド需要の回復も見込まれることから22年実績よりは伸びると考えられますが、全国総店舗数の減少もあり2019年の年間売上高を超えることは難しいでしょう。23年以降も全百貨店売上高は5兆円台で推移するとみています。
百貨店は都心と地方で二極化している
非常に乱暴ですが、現在の百貨店の状況を一言で表すなら、「好調な都心旗艦店と厳しい地方・郊外店」という二極化の状況にあると言えます。今回過去最高売上高を記録した伊勢丹新宿本店は好調な都心旗艦店の筆頭でしょう。他方、不調な地方・郊外店の好例は閉店が発表された名鉄百貨店一宮店だと言えます。せっかくですので、名鉄百貨店が位置する愛知県の事例を見てみましょう。
2023年4月27日の日経新聞の記事です。
愛知県の各地で百貨店の閉店が相次いでいる。20年に、ほの国百貨店(豊橋市)、西武岡崎店(岡崎市)が相次ぎ閉店し、21年には松坂屋豊田店(豊田市)も閉店した。
日本百貨店協会によれば、名鉄一宮店が閉店すると協会に加盟する百貨店は愛知県では名古屋市内の6店舗のみになる。岐阜県は1店舗、三重県は2店舗だ。
とあります。
24年1月に名鉄一宮店が閉店してしまうと、愛知県内では名古屋市にしか百貨店はなくなってしまいます。その名古屋市にある百貨店は地方店の閉店を尻目に好調を続けています。記事にもこうあります。
大都市にあるからといって必ずしも安泰とは言えない
こうした状況にあり、新宿伊勢丹同様にJR名古屋高島屋も過去最高売上高を記録しています。その一方で名鉄一宮店の年間売上高は59億円にまで落ち込み、閉店が決定しました。
今後、愛知県のように好調な都心旗艦店だけが残り、中小型の地方・郊外店はほとんどが閉店に追い込まれるでしょう。しかし、大都市都心にあっても必ずしも安泰というわけではありません。
名古屋市の都心にあった老舗の丸栄百貨店は不振によって2018年に閉店に追い込まれていますし、東京の松坂屋銀座店も2013年に閉店し、ファッションテナントビルの「GINZA SIX(ギンザシックス)」にリニューアルしています。東京・銀座という好立地にありながら松坂屋の晩年は年商が100億円台しかなかったといわれているほどに売れ行き不振を極めていました。