女性係長が急激に増加

とはいえ、一定数に達した女性新卒総合職は、次第に男性社会に定着していきます。

そして、彼女らが通り過ぎた後に、「女性活躍」の轍を残し続けました。それは、「係長に占める女性割合」というデータがよく物語っています。

なぜ、課長ではなく、係長なのか?

理由は簡単です。係長の場合、大企業でも30代前半でその職に就くケースが多いでしょう。とすると、女性のトップランナーがこの年代に差し掛かるあたりで、「男女比率」に変化が生まれ始めます。

対して課長の新任年齢は40歳前後なので、なかなかその変化が見えません。さらに言うと、係長はその多くが「課長」や「専任職」などに昇給して通り過ぎていく役職です。なので、高齢まで滞留している人が多くはありません。それだけに、30代前半に女性のボリュームゾーンが差し掛かると男女割合が変化しやすいのです。

一方で課長職は役職定年の55歳までその多くが滞留します。とすると、入り口で女性が増え始めても、ロートル男性が課長に居座るために、シェアの変化が見て取りにくいといえるでしょう。

実際、大企業の係長職に占める女性割合は、2005年から2010年には急増し、12%にまで達しています(図表3)。

【図表】係長に占める女性比率
図表=筆者作成
※出典=厚生労働省「賃金動向基本統計調査」

企業が変わり始めた事情

この「2000~2005年卒」の女性大卒フロンティアが、30代に差し掛かる頃、大企業はいよいよ女性問題に頭を悩ませ始めたわけです。短大卒一般職であれば、企業は容易に人員補充や育成が可能なために、彼女らの結婚・出産退職を無理に止めはしませんでした。いやむしろ、「新たなお嫁さん候補確保」や「男性未婚社員のモチベーションアップ」のために、進んで入れ替えを望んだものです。

それが、育成に手間がかかる総合職だと、話は別です。ちょうど、10年前後仕事を経験し、バリバリ働く年代の彼女らが、家事育児で辞めてしまったら、なかなか補充は利きません。しかも、そんな形で女性の勤続期間が短いようだと、新卒採用の時、女子大生に振り向いてもらえなくもなります。どちらも企業経営にとっては大きな痛手に他なりません。

そこで、このころから徐々に、女性活躍の機運が頭をもたげるのです(ただ、前述の通り、それでも当時は「女性活用」と差別的な用語を用いてはいましたが)。

新任課長の女性割合は3割に迫る

2015年頃になると、女性のフロントランナーは30代中盤に達しました。もう企業としても待ったなしの状態です。だからこそ、そのあたりから、女性活躍推進策が妙に流行しだしたのです。それは、安倍政権下で「女性活躍」の旗が、しきりに振られたことだけで起きたわけでは、ありません。

そうして、パフォーマンスを上げ続ける女性たちは、結婚しても出産しても辞めることなく、働き続ける機運がどんどん高まっていく(図表4)。

【図表】女性の長期勤続が常識化(女性がいないと成り立たない)
図表=筆者作成

結果、今では、大企業でも30代後半までは女性のプレゼンスが3割に近づくまでにもなっています(図表1を参照ください)。

と同時に、新任課長職に占める女性割合も、3割近くにまでなっています。課長に占める女性割合が、10%程度で遅々として向上しないのは、50歳前後のロートル男性課長が大量に居残っているためです。新任に限れば、すでに女性は十分に、活躍を始めている。このままあと10年たてば、女性課長のボリュームゾーンは50歳に到達します。部長の初任年齢は45~50歳がボリュームゾーンだから、その頃には、部長に占める女性プレゼンスも当然高まっているでしょう(図表5)。

【図表】課長も入り口では「女性3割プレゼンス」
図表=筆者作成
※このデータは賃金構造基本統計調査の「役職別在籍年数」を基に作成しています。データの性格上、転職により現職への在籍年数が短い人なども含まれています。

2000年頃に始まった四大卒女性総合職のフロンティアは、このように拡大し続けたのです。その陰には、男性社会でつらい思いに耐えてきた女性たちの努力がありました。