「男性社会は300年たっても崩れない」は本当か
ところが、です。どうも、こうした変化が正確に受け止められず、女性活躍を後押ししたいがために、「いまだに日本は全く変わっていない」と言いすぎるきらいが今の日本にはあります。
2022年9月、国連の女性局と経済社会局がまとめた報告書によると、世界各国で男女平等を保障し、女性に対する差別を禁止する法律が整備されるまで、現在のペースだと最長で286年かかる恐れがあるという分析がされていました。また同様に、職場で女性が男性と同等に幹部職を占めるまでには140年以上かかるとされています。
国連による発表に限らず、国内の識者の中にも「今のままでは日本企業における男性社会は300年たっても壊れず、今後長らくの間、女性活躍は実現しないだろう」と発言する人もいます。女性活躍について、日本が欧米よりも遅れているのは確かであり、変化のスピードが遅いのも事実です。だから、「300年かかる」と、ついそう言いたくなる気持ちも分からなくはありませんが、こうした表現を軽々しく使ってほしくありませんし、使うべきではないと思います。
「日本は全然変わらない」と嘆く人が見落としていること
わずか20年の歴史をさかのぼっただけでも、日本は今と比べものにならないほどの男性社会でした。フロンティア女性たちは想像もつかないほどつらい思いをしてきたのです。そうして勝ち取った現在の果実を見落とすのは、彼女たちに失礼でしょう。
相当アウェーな環境だった職場に入り、頑張って働いてきた女性たちがいました。その頑張りがあったおかげで「女性に活躍してもらわなければ日本社会は立ち行かない」という流れが生まれ、男性社会が徐々に壊れてきた。この期に及んで「日本社会は全然変わっていないし、これから先も変化にはかなりの時間が必要だ」と言うのは、大変な思いをして戦ってきた先輩たちの頑張りを正当に評価しないことになると思うのです。
今回、多くのジェンダー論者も気づいていない、嬉しい誤算を書きました。女性の夜明けは近い!
ただし、産業界が女性を受け入れるという変化により、依然として残る昭和型の心との間で軋みがいよいよ激しくなって来ました。社会や会社は今、「働く妻たち」に優しくしようと喧しいのですが、それは、「軋み」への処方箋とはなっていません。
なぜなら、少子化の最大要因は、「妻」ではなくて、「未婚者」にあるのです。なぜ、女性たちが結婚を選ばないか。「働く妻」に優しくすることや「イクメン奨励」だけでは、未婚者たちが頷いてくれはしないでしょう。
その手を差し伸べるべき根源を、次回以降明らかにしていきます。