世襲議員はなぜ増えたのか。『世襲 政治・企業・歌舞伎』(幻冬舎新書)などの著書がある作家の中川右介さんは「世襲3世は東京で生まれ、地方の選挙区とは縁がないが、出自を巧妙にごまかしながら選挙に勝ってきた。しかし世襲4世は選挙でも苦戦している」という――。
右奥、岸田翔太郎氏。左手前は岸田文雄首相。
写真=時事通信フォト
変に世襲を売りにしなければ……(右奥、岸田翔太郎氏。左手前は岸田文雄首相。2023年5月15日、首相官邸)

岸田首相は「広島生まれ」とは書いていない

岸田文雄首相の公式ホームページの「プロフィール」には、「1957年(昭和32年) 生まれ」とだけ書かれていて、出生地は明記していない。さらに小学校から中学校、高校の名前は記載がなく、いきなり、「1982年(昭和57年) 早稲田大学法学部卒業」となっている。高校は名門・開成高校なのに記載していないのだ。

いきなり「生まれ」とだけ書かれている岸田首相の公式ホームページ
いきなり「生まれ」とだけ書かれている岸田首相の公式ホームページ

政治家は一般に、出生地や学校は細かく記載する。「俺と同じ高校なんだ」「わたしの中学を出ている」と分かると票を入れてくれそうだからだ。

しかし岸田首相の場合、出生地や学校を書いても票にならない。むしろ、広島と縁がないことがバレてしまい、選挙にマイナスだという判断なのだろう。

岸田首相は1957年7月29日に東京で生まれた。この時、祖父・正記は存命だったが国会議員は引退しており(61年に亡くなる)、父は通産官僚だった。

父・文武の転勤で、文雄は小学校時代をニューヨークで過ごす。その後も中学、高校、大学と東京で過ごしている。

世襲3世の岸田首相自身は広島と縁がないのだ。

安倍氏は「山口は私のふるさと」と臆面もなく述べた

ちなみに岸田首相と同じ世襲3世だった安倍氏も東京で生まれ育っている。学校も小学校から大学まで成蹊(東京)で、山口県で暮らしたことはない。よって山口県は安倍氏の故郷ではない。

安倍政権でのG7サミットは2016年の三重県伊勢志摩だったが、2016年12月に、ロシアのプーチン大統領が来日し、安倍首相(当時)の「地元」山口県で首脳会談が開かれた。

この時、安倍氏は「私のふるさとに来ていただいた」と胸を張ったが、これは嘘である。