ロシアによるウクライナ侵攻が始まってから1年が経過。2023年2月、激しい戦闘が続くウクライナ東部に入った戦場ジャーナリストの佐藤和孝さんは「これまで40年以上にわたってさまざまな戦場を見てきたが、今回ほど激しく、広範囲におよぶ破壊は見たことがない。これはウクライナのすべてを破壊し尽くし、文化を根絶やしにしようとする侵略者プーチンの暴虐だ」という――。
侵攻1年の節目は戦争犯罪の行われた街にいた
2023年2月11日、ロシアの軍事侵攻から1年、ウクライナの何がどう変わったのかを取材すべく、戦線が膠着している東部ドンバス地方に入った。侵攻直後の3月上旬のキーウ・イルピン・ブチャ、昨年11月下旬の南部ヘルソンに続き、3度目の取材である。
今回は18日間の日程で、ポーランドのクラクフからバスで19時間ほどかけて首都キーウに入り、ハルキウ州の州都ハルキウまで6~7時間かけて移動し、そこで3泊した。その後、バスで2時間ほどかかる南東部の要衝イジュームで3泊。そこからドネツク州の中規模都市クラマトルスクに移動して5泊した。これまでのウクライナ取材のなかでも、とりわけ移動が多かった。
現在も戦闘が続く東部の“今”を、日程の許す限り報道すべく厳しいスケジュールを組んだのだが、陸路の移動は本当にきつい。帰りなどはクラマトルシクからキーウまで、800キロを一気に走破する強行軍だった。東京から青森よりも遠い距離で、しかも雪や泥でぬかるんでいる未舗装の道が多い。
侵攻から丸1年にあたる2月24日は、クラマトルスクにいた。クラマトルスクは昨年4月、混雑するクラマトルスク駅にロシア軍のクラスター弾による爆撃があり、数十人の民間人が死亡した。クラスター弾の使用はオスロ条約で禁止されており、ロシアが条約違反の殺傷力の高い兵器を使用し、「戦争犯罪」を積み重ねた“証拠”の一つが刻まれた地だ。