井戸に弾薬を投げ入れ生活できなくするやり口

バフムート近隣のチャシブヤール村は、人口1500人ほどの小さな村だったが、徹底的に破壊された。ロシア軍撤退から5カ月になろうという現在も、住民はまだ40人ほどしか戻っていない。水道設備のインフラがやられても、村には井戸水があるから生活は可能なはずだ。しかしロシア軍は、ほとんどの井戸に弾薬などを投げ入れ、使えなくしていった。ここまでのひどい状況を目の当たりにしてしまうと、とても早期の終戦は望めないと断言できる。ウクライナのロシアに対する憎しみは、50年、100年と残り続けるだろう。実際、ウクライナ国民の9割近くが、「2014年以前までの領土をすべて奪還する」というゼレンスキー大統領を支持している。現状維持でとどまる気は、ウクライナ側には毛頭ない。とくに「停戦」などは言語道断だ。

停戦はしょせん戦争の小休止にしかならない

中東戦争でもチェチェン紛争でも、停戦しては繰り返し戦争が起こったように、停戦はしょせん戦争継続上の小休止にしかならないのである。西側諸国の経済制裁や軍の消耗で苦しんでいるロシアが、再び準備万端で攻めてくる時間を与えてしまうだけだ。停戦を挟めば、それこそ第3次世界大戦へと事態はエスカレーションするだろう。

首都キーウに夜、クルマで戻ったとき、運転してくれている現地のフィクサーが、街灯やビルの灯りを見ながらこんなことを言った。

「この灯りを見てくれ。あいつら(ロシア軍)は、何百回キーウのインフラを攻撃したんだ。でも俺たちは素早く直している。何度でも、すぐ直す」

こういうところにも、ウクライナ人たちの不屈の闘志が垣間見えている。