「週刊こどもニュース」のキャスターを務めていたとき、鎌田靖さんはわかりやすく表現する大切さをしみじみ感じるようになった。鎌田さんが試行錯誤しながら会得した伝え方とは──。
「へぇ……面白いなぁ」と思ったら
菅元首相が所信表明演説で述べた「強い経済、強い財政、強い社会保障」。シンプルな言葉なので、優秀な新聞記者は普通の人はわかるだろうと思い込んだのか、そのまま使われていることが多い。しかし私は当初、これは絶対にわからないだろうなと思いました。
「菅首相が目指しているのは、環境やエネルギー、街づくりなど日本が抱えるさまざまな課題への取り組みを通じて新たな需要や雇用を生み出すこと。これが強い経済であり、経済がよくなって会社が儲かれば税金もたくさん納めてくれるので国のお金が豊かになる。これが強い財政。国のお金が豊かになれば、弱い人々に振り向けるお金も増える。これが強い社会保障」
このように経済、財政、社会保障の3つがつながっていることをきちんと説明しておかなければ意味が通じないと思います。
それから、私は自分で取材に行ったり関連する書物を読んで「へぇ」と思ったことは、多くの視聴者も「へぇ」と思ってくれるのではないかと期待していたりします。
難しい話をそのまま難しく話しても面白くない。ちょっとした驚き、お得な情報、トリビア的な雑学、何でもいいから「へぇ」と思わせなければ、関心を持ってもらえません。そして関心を持ってもらえなければ、いくら丁寧に説明しても理解は進まない。