2022年3月、ウクライナに日本政府が自衛隊の防弾チョッキを提供する方針を決めたことについて発言を1日で訂正した共産党幹部の田村智子氏。自身の発言を180度翻したのはなぜなのか。元外務省主任分析官である佐藤優さんは「田村氏のツイートや記者会見での発言の訂正は党創立100年を控え、危機感と動揺が党内に生まれていることを示唆している」という――。
※本稿は、佐藤優『日本共産党の100年』(朝日新聞出版)の一部を再編集したものです。
日本共産党対策委員会長 田村智子議員のツイート
野党共闘の波紋が広がり続けている。2021年12月6日、毎日新聞のコラム「風知草」は日本共産党の野党共闘の総括について疑問符をつけた。これに対し「しんぶん赤旗」は反論した。立憲民主党などに強い影響力を持つ連合は、野党共闘について批判的な総括を行った。こうした中、田村智子・日本共産党政策委員長によるツイートが話題になった。朝日新聞が「『共産が政権に関わったら…』国民に広がった不安、党内で自省の議論」との見出しで次のように伝えている。
10月の衆院選で「野党共闘で政権交代を」と訴えたものの議席を減らした共産党で、自省の議論が始まっている。きっかけの一つは、「野党としての共産党なら良いけれど、政権に関わったらどうなるの? という不安は、私たちの想像を超えて広がった」という田村智子政策委員長のツイートだ。
(中略)
田村氏は自身のツイッターで、共産が「政権に関わる存在」になったときに「全く異なる不安になるのでは」と分析。政権交代を軸にした選挙戦での訴えが「国民の中に広がる不安をつかんだものではなかった」などと省みる投稿をした(朝日新聞デジタル、2021年12月10日)
(中略)
田村氏は自身のツイッターで、共産が「政権に関わる存在」になったときに「全く異なる不安になるのでは」と分析。政権交代を軸にした選挙戦での訴えが「国民の中に広がる不安をつかんだものではなかった」などと省みる投稿をした(朝日新聞デジタル、2021年12月10日)
ツイートの削除は田村氏の判断なのだろうか
田村氏といえば、安倍晋三元首相の「桜を見る会」問題の国会での追及で広くその名を知られるようになった人物だ。
田村氏は朝日新聞の取材に「『桜を見る会』の後の総選挙だったので、今までなら『私たちはこの問題でこれだけ追及した』と訴え、『こういう議席が必要だ』とできる選挙だった。しかし、政権交代をすればわかる話だからやらなかった」と振り返った。
その上で、「今回の衆院選は完全な与党宣言はしていないが、政権を支える立ち位置を示した。そうなると受け取る側も違うということに、選挙が終わってから気づいた」。野党共闘の原点になった安全保障関連法の強行についても、「6年たつなかで国民の感情も同じ状況ではない。私たちの訴えは今日の国際情勢や自公の動きのもとでちゃんと知らせていかないと国民との合意になっていかない」と今後の課題として挙げた(同前)
その上で、「今回の衆院選は完全な与党宣言はしていないが、政権を支える立ち位置を示した。そうなると受け取る側も違うということに、選挙が終わってから気づいた」。野党共闘の原点になった安全保障関連法の強行についても、「6年たつなかで国民の感情も同じ状況ではない。私たちの訴えは今日の国際情勢や自公の動きのもとでちゃんと知らせていかないと国民との合意になっていかない」と今後の課題として挙げた(同前)
こうした田村氏の総選挙に対する見解は、同年11月27、28日に開かれた第四回中央委員会総会(四中総)での志位委員長の発言には見られないものだ。その後、田村氏の投稿は自身の判断で削除されたという。本当に田村氏の判断で削除されたのだろうか。
私が訝しく思うのには理由がある。