手取り月収は89万円なのに毎月の残りは9万円程度
今回、家計相談に申し込まれたのは、会社員の佐々木克典さん(仮名・55歳)。家族構成は、年棒制の経営コンサルタントである克典さん、会社員の妻(52歳)、そして来春に中学受験を控える小学5年生の息子の3人家族です。世帯収入は手取りで月89万円(夫=59万円、妻=30万円)、ボーナスは妻のみ年間130万円。額面の世帯年収は1800万円程度の、いわゆる“パワーカップル”です。
一見経済的に申し分なさそうな家庭ですが、ふたを開けると、家計は火の車寸前。そこで夫の克典さんが思いつめて来店されたのです。
「わが家は、手取りの月収は89万円あります。ですが、毎月手元に残るのは9万4000円。10分の1しか残らないんです。僕はとてもまずいことだと思うんですが、妻はまったく気にならないようで……。家計を管理している僕がいくら『先を考えると500万円では足りないから、節約してお金をためよう』と訴えても聞く耳を持たず、毎月20万円以上を息子の中学受験や自分の服や娯楽などにかけているんです……」
克典さんの危機感はよく分かります。ローン返済中の持ち家があるとはいえ、貯金が500万円しかないというのは、これから教育費がピークを迎える一家としては非常に心細い。もしお子さんが中学から大学まで10年間私立に通うことになれば、現在の貯金に充てている毎月の黒字9万円では、年間100万円かかる私立中学・高校・大学の学費に消え、貯金はできません。老後資金はおろか、病気などで収入減になれば生活できなくなります。ましてや克典さんは年齢も60歳近く。収入減と教育費増が重なる恐ろしさを、克典さんは私に指摘されるまでもなく、十分自覚しているのです。
佐々木家のように、高年収の割にお金がたまらないケースは少なくありません。彼らに共通する言い訳は「うちは余裕があるから大丈夫」「忙しいから時間をお金で買うのは仕方ない」など。佐々木家はこれらに加え、「息子の才能を伸ばすための投資」という妻の大義名分で、湯水のように教育費を投じています。妻にしてみれば、自身も働いている上、家計は夫の克典さんがしっかり管理しているため二重の安心感があるのでしょう。
「家計に関心のない妻を、どうにか節約生活に巻き込みたい」。そう話す克典さんの目は切実でした。