エリート家族に囲まれ「私は失敗作」

玲奈さんは東京から通勤圏の郊外で生まれ育つ。運動も楽器の演奏も苦手だったが、勉強はそれなりにできて、県内でもトップから3番目の進学高校から名門私立大学に進学した。

その大学は全国的にも有名で、誰からも一目置かれる学歴だ。それなのに「私なんて全然ダメですよ。超バカ」と言う。

「ウチは父親が『私大の雄』と呼ばれる超名門校、母親が国立女子大の最高峰を出ています。兄と妹がいるのですが、彼らは県内トップ校に進学し、2人とも父と同じ大学に進学しました。父は大手企業を定年まで勤め上げ、母は自宅の一部を改装して塾を経営していました。私だけが家族の中で『失敗作』なんです」

常に親から厳しくしつけられ、勉強をさせられてきたが、思うような結果が出せなかったという。だから簡単に「失敗作」という言葉が出るのだ。

「失敗作って、母からよく言われていたんです。母は『昭和の上司』みたいな人です。自分の中に正義があり、そこから曲がったことが大嫌いで、白黒をはっきりつけたがる。仕切るのも上手で、優秀かつ努力家です。運がよく器用に見えるのは、頑張り屋だから。

ただ、問題なのは他人に対しては冷静で常識的で面倒見がいいのに、身内に対してはヒステリックになることかな」

母は64歳の現在も、教育関係の仕事をしているという。母より2歳年上だという父について聞くと、「定年退職になった5~6年前に死にました」という。死因は自死に近かったという。

「もともと家庭を顧みず、家にお金を入れずに浮気をしていた。母からは『定年になったら、家からたたき出す』と言われていました。私にはいい父だったんですけれどね。でも会社の肩書が外れ、女性からそっぽを向かれたんでしょう。

別居先の家で亡くなっていました。母は『犬死だね』と言いながらも、葬式をきっちり上げていました。私は父の淫蕩の血が流れているようです」

相手探しに窮して風俗勤務

遡り、大学時代の玲奈さんは次第に見た目も良くなっていき、それなりに求めてくる男性も増えてきた。クラスメイト、サークルの先輩や後輩、他大学の友達付き合いをしている人とも関係を持ち、ワンナイトも重ねた。

「おそらく、体質的にも性交渉に向いていたと思うんです。その最中はその人のことしか考えられなくなるし、胸は大きく、唾液がよく出て、唇、口の中が柔らかいので男性は喜びます。いわゆる『名器』だとは多くの人に言われていますから」

性産業で働く女性
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あまりに性交渉を持ちすぎて、大学で孤立したときは、相手に不自由した。かつてよりどりみどりだったが、誰とでもすると噂が広まり男子学生が玲奈さんと距離を置くようになった。性欲処理のために性産業に従事したことがある。

「『ヘルス』と呼ばれる店で働きました。いわゆる本番以外のことは、ほぼすべてをします。この仕事が向いていたらしく、月収は100万円を超え、指名のお客様がつくようになると、収入はさらに増えました。これは違法なので絶対にしてはいけないのですが、お客様によっては行為そのものをしてしまったこともあります」

相手から求められる喜びと、一時的にせよ愛し・愛される心地よさ。行為をしている間は自己肯定感がどんどん上がっていくのが自分でもわかったという。

「ヘルスで仕事をしていた時期は、就活と重なった。大企業は大学名で落とされ、その他企業も面接で落とされた。お祈りメール(不採用を告げるメールのこと)が来るたびに、地の底まで自己肯定感が下がった。その傷ついた心がヘルスの仕事で回復していくこともわかりました」