「社内恋愛禁止」を破る

そして肌は異性を求める。彼としようと試みても、彼の男性機能は思うように働かない。

「発情とコロナ禍の初期が重なって、大変でしたよ。誰でもいいからできる人をアプリで探して、行為をして、その数日後に発熱したこともありました。すぐに熱が下がったし、味覚も嗅覚もあったので、陽性ではないと思いますけどね。

人に会えないけれど性欲はあるので、器具を使って自慰していましたが満たされない。人間の重みとぬくもり、そして私を求める男性の肉体の変化、その後の快楽を求めました。回復すると、街で男性をナンパして、ホテルに行ったこともあります」

その後、彼とは別れた。そして、「社内で恋愛はしないでくれ」という社長から言われた禁忌も破ってしまった。

ダメと言われると手を出したくなる

「私も33歳になり、加齢している。ヘルスで働く体力もないし、オシャレやファッションに気を配るのも面倒くさいし、そこにお金も使いたくない。既婚者に手を出すと大変な目にあうのは、前回学んでいる。手っ取り早く男性としたくて、転職してきたばかりの25歳の男性に手を付けた」

その男性は女性経験が少なく、一気に玲奈さんに夢中になる。しかし、2~3回関係を持つと、玲奈さんに欲望がなくなる。そして新しい対象を求めるようになる。

沢木文『沼にはまる人々』(ポプラ新書)
沢木文『沼にはまる人々』(ポプラ新書)

「今は性欲が盛り上がっていて、仕事中に自慰することもありますし、アプリで出会った人と乱交などもしています。大学時代のセフレに連絡をして、ウチに来てもらったこともあります。刺激を得れば得るほど、もっと他の快楽が欲しくなるんです」

玲奈さんの話を聞いていると、生活習慣病になってしまう人の食生活を連想してしまう。甘い水を飲めば飲むほど喉が渇き、そしてその水は全身を巡り、血管や臓器を壊していく。それがわかっていてもやめられない。

「たぶん、依存症なんだと思います。女性ともしたことはあるんですが、男性器のように目に見える変化がないと、快楽のアタックが弱い。今、社内でしたくてたまらない。

私が手を付けた25歳の男の子は、明らかに私を避けていて、社長はそれに気づいている。『次やったらアウト』という無言の圧力もあるんです」

ダメと言われると手を出したくなるという。快楽の先に何があるのか、それは玲奈さん自身が一番よくわかっているのだ。

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