40年の会社勤めを終えてたどり着いた人生のひとつの答え

吉越浩一郎
1947年千葉県生まれ。ドイツ・ハイデルベルグ大学留学後、72年に上智大学外国語学部ドイツ語学科卒業。メリタジャパンなどを経て83年にトリンプ・インターナショナル(香港)に入社。その後、トリンプ・インターナショナル・ジャパンのマーケティング本部長、代表取締役副社長を経て、92年に代表取締役社長就任。「早朝会議」「ノー残業」「がんばるタイム」など、スピードと効率重視のユニークな制度を次々に取り入れ、19年連続の増収増益を達成。2006年同社退社後は、講演やテレビのコメンテーターとして活躍。近著に『仕事ができる社員、できない社員』(三笠書房)、『君はまだ残業しているのか』(PHP文庫)、『定年が楽しみになる生き方』(ワック)など。

私がビジネスパーソンとしての現役生活を退いて、5年と少しになります。40年に及んだビジネスキャリアの多くは、外資系の下着メーカー、トリンプ・インターナショナル・ジャパンに籍を置いてのものでした。同社では、14年間、社長の職責を担って、さまざまな社内改革と共に増収増益の経営体質を築き上げました。

現役時代の体験は、数多くのビジネス書にも結実しています。著書で訴えた仕事の流儀や、ワーク・ライフ・バランスの考え方などは、読者から多くの反響をいただき、いまでもすべては受けきれないほど講演の依頼があります。

ちょうど40年前に始まったビジネスマン人生を振り返れば感慨もひとしおですが、実は、私の結婚生活がスタートしたのもそのころなのです。

正確に言えば、数カ月、ビジネスマン人生よりも結婚生活のほうが先にスタートしました。ドイツ留学から帰って、なお1年の大学での学業期間を残していた私は、学生という身分のまま結婚生活をスタートさせたのです。

結婚を決めていた外国人女性のビザを取得するために、籍を入れざるを得なかったからです。その女性が、ドイツ留学で知り合ったフランス人、ダニエル・グラントン。現在の妻です。彼女は、私の帰国と合わせて日本にやってきていたのです。

妻となる女性がフランス人だったのは、たまたまのなりゆきです。偶然が引き寄せた運命だったわけですが、その偶然が、私の人生を大きく変えました。人生観とか生活スタイルといったものだけでなく、ビジネスパーソンとしての仕事観や具体的な仕事の流儀にも少なからぬ影響を及ぼしました。