中大型BEVが「テスラしか売れない」特殊要因
一方、アリアは高価でサイズも大きいので、セカンドカーや高齢者の需要とはマッチしない。
また、家庭で満充電にするためには高価な高出力充電器を設置する必要がある(3kWの充電器では小さいほうのバッテリーを搭載したモデルでもフル充電に25.5時間もかかる)。そして遠距離ドライブには上記の困難が待っている。
だから売れないのである。
BEVを実際に買おうとしている人は、BEVの現実をわかったうえで購入しているのである。中大型BEVではテスラが売れているが、これもスーパーチャージャー網の存在という実用上の理由がある。
「低圧受電」か「高圧受電」か、それが問題だ
それではなぜ、日本で高出力の充電器の設置が進まないのか。その最大の要因は電力会社との契約形態にある。おおよそ50kWを境に、契約のあり方が根本的に変わるのである。
50kW未満であれば低圧受電契約となり、通常の200Vでの受電となる。しかし50kWを超えると高圧受電契約となって6600Vでの受電となり、それを目的に応じて適切な電圧に変圧するためのキュービクルという設備が必要となる。そのため、50kWの充電器であれば約500万円で設置できるのに対し、100kW級を設置しようとすれば約2500万円もかかるのだ。
設置費用だけでなく、受電の基本契約料も高圧受電のほうが高く、またキュービクルには定期的な保守点検が必要になるためメンテナンス専門業者と契約しなければならない。
年間のランニングコストは、50kWであれば60万円程度だが、100kWでは250万円程度かかるという。このことから、日本の充電スポットの多くが50kW以下で、かつ1基しか設置されていないところが多いという状況になっているのである。
加えて、このように運営側の設置およびランニングコストがかかるので、急速充電にかかるコストは一般家庭で充電するよりもかなり割高だ。