なるべく外に用事か「行くところ」を見つける
⑥チャンネル権をどっちが取るかは案外、たがいの感情を刺激するものです。夫たるもの、チャンネルぐらい妻に譲ってしまいましょう。その代わり、ぜひ観たいものはあらかじめ言っておくこと。「明日のサッカーの試合は絶対観るよ」というように。
⑦いつも一緒ではおたがいに疲れます。たまには一人で外出するとよいと思います。心理学者の多湖輝さんが、「キョウヨウ」と「キョウイク」が脳の老化防止になると言っていました。「キョウヨウ」は「教養」にあらず。「今日、用がある」ということ。「キョウイク」は「教育」にあらず。「今日、行くところがある」ということ。
なるべく外に用事をつくること。用事がなかったら、ともかく「行くところ」を見つけること。公園でもよいし、川べりで釣りをするでもよいし、図書館でもいいのです。
⑧自立。当たり前じゃないかと言われそうですが、日本の男性は概して妻を母親代わりとしているので、ほんとうに自立できているかどうか疑わしいといえるでしょう。
それが証拠に妻に先立たれた男性は追いかけるように死に急ぐといわれます。身の回りのことを妻任せにしていたため、料理一つ満足にできず、朝から台所の隅で一升瓶を抱えているような生活を送れば健康を害します。
⑨パンツ姿で家の中をうろうろする。注意されるまで垢のついたシャツを着替えない。無頓着にも程があります。
⑩長い間一緒に暮らしてきました。定年になれば仕事の人間関係は縁が切れ、同窓会にしろ、だんだん億劫になってきます。最後までそばにいるのはおたがい(夫婦)なのです。
長い地球の歴史を思えば、その出会いは不思議です。何十億の人の中から「その人」を選んだわけですから。そんな関係ですから、相手に思いやりの心を持つのは当然といえば当然ではないでしょうか。
あなたの話をわざわざ聞く必要はない
60代からの夫婦関係円満の秘訣は、一言でいえば「会話力」です。
多くの男性が、表現力にやや難ありということ。その理由として、相手との距離を正確に把握していないということが挙げられます。
ですから、関係が楽しいものになりません。
とくに妻の側からはそう思えるのです。
会社勤めのとき、あなたの話を聞く必要がある人とあなたは話していました。でも、家庭に入ると、あなたの話をわざわざ聞く必要がない人が周りにいるという自覚を持ちましょう。
ですから命令口調は致命的です。
妻があなたと話したがらないのは、あなたの話し方が「上から目線」だからです。
こういう話をすると、馬鹿丁寧に話す人がいますが、そうではありません。口調が乱暴だというのでなく、立場が上からの命令口調だということです。
出先で、「何を食べようか」と質問されているのに、「なんでもいい」「まかせるよ」というのは、一見、相手に合わせているようですが、要は「キミとの食事はなんでもいい」と思っているわけです。
「そんなつもりはない」と反論するかもしれません。でも、あなたが「キミとの食事はなんでもいいなんて思ってないよ」と主張しても、相手にはそう伝わっているわけです。
「おれはそんなふうに思ってない」ということ自体が命令口調だということです。
「そうか。そういうふうに伝わったのか。ごめん。おれが言いたかったのは、今は食べたいものがとくにないので、キミの好きなものでいいよ、という意味なんだ」というべきだということです。
そんな面倒くさい言い方はできない。
ほら、もう命令口調になっていませんか。
命令されていい気分に感じる人はほとんどいないでしょう。
会社では「よく話を聞いてくれた」と思っているかもしれませんが、部下は上司の話を聞くのも仕事だと思って、黙って聞いているだけです。
家族はあなたの話を聞く義務はありません。ですから間違いなく命令口調は嫌われます。息子や娘はとくにそうです。社会人になっているなら、なおさらです。
「おやじの時代とは違うんだ」。この一言で終わりです。
基本は聞き役になること。これこそ好かれるコツです。