60代を充実させるにはどうすればいいか。漫画『島耕作』シリーズなどで知られる漫画家・弘兼憲史さんは「60代は“もう1つの青春”の始まりである。古くさいしがらみから解放されるために、『肩書』を断る勇気が必要だ」という――。

※本稿は、弘兼憲史『弘兼流 60歳から、好きに生きてみないか』(三笠書房)の一部を再編集したものです。

笑顔で仕事をする年配のビジネスパーソン
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60代は「まだ」と「まだまだ」を大切にしよう

「もう」という言葉は、「歳だから」という言葉につながります。

「もう歳だから」と自覚したときから、ほんものの老いは始まると思います。「もう」ではなく、これからは「まだ」を口癖にしたいものです。きっと別の生き方が訪れます。

わたしは今でも、現役の漫画家を続けています。「もう歳だから」と思って漫画家をやめようとは思いません。

「弘兼さんは漫画家だから……」ともよく言われます。

これは漫画家という職業は、フリーランスだからいつまでも続けられるという意味だと思います。でも実際は、漫画家のような個人商店で、しかも人気商売のほうがはるかに大変です。だから人一倍がんばります。

「引退」という言葉があります。

スポーツ選手や職人などが、引退を口にし、現役を退きます。そのほとんどは「体力的な問題」です。体力の限界を感じるというものです。これは「もう歳だから」と同じです。

引退とは、それで人生が終わりというものではありません。「もう歳だから、これはやめる」という意味にすぎず、これから始まる第二の人生で、ほかのことなら「まだ、できる」ということではないでしょうか。

「ヤング・オールド」以上の人には、前向きな「引退」をおすすめします。

「ほかのことならまだやれる」ということです。

わたしも漫画家をいつか引退するかもしれません。もしそうなったとしてもわたしの人生は漫画だけではありません。

仮に漫画家は引退しても、好きなワインや料理を、もっと深めていくという道があります。

でも、わたしはまだ引退したくないので、好奇心を持ち続け、健康に気を遣っています。まだまだ、やりたいことだらけだからです。

最後に60代の人が、ドキッとする言葉を贈ります。

「一生、それをやらないままでいいんですか」

「まだ」を大切にしましょう。「まだまだ」これからなのです。