人生やビジネスといった「答えのないゲーム」を有利に進めるにはどうすればいいか。経営コンサルタントの高松智史さんは「そのためには経験したことのない『ファクト』に対峙しても『示唆』を感じ取り、言語にする必要がある。私は3つの口癖を覚えるようにしている」という――。

※本稿は、高松智史『「答えのないゲーム」を楽しむ 思考技術』(実業之日本社)の一部を再編集したものです。

チェスボードゲーム
写真=iStock.com/marchmeena29
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誰もが日々当たり前のように行う「示唆」の正体

「示唆」とは、ファクトから言えることです。

英語が達者な人であれば、インプリケーション。

BCG的にいえば、So-What(ソーワット)。

僕が好きな言い方でいえば、メッセージ。

これらはすべて「示唆」と同じ意味で使える言葉です。

ビジネス書なのでそれっぽい言葉にしてみましたが、誰もが日々「示唆」と過ごしています。

・仲のいい友達が「髪の毛をばっさり切って、女子会に登場」した時、「イメチェン? 何かあった? 失恋!?」

このようにひと盛り上がりするシーンがありますよね。

ここにも「ファクトから言えること」=示唆が含まれていますがわかりますか?

それはもちろん、ファクト=「髪の毛をばっさり切った」で、示唆=「失恋!? (失恋したに違いない)」です。

・めったにインスタグラムにアップしない友達のA子が「イタリアンのお店で食事をしている+ピントは向かいの皿に合っている」写真をアップした時に、コメントに「彼氏できた?」

この何気ないやりとりにも「ファクトから言えること」=示唆が含まれています。

仕事上での何気ないやりとりも示唆だらけです。

・いつもは「タカマツさん」と呼んでくる上司が「タカマっちゃん」と呼ぶ時、これは「何か、ちょっと面倒なお願いをしてくるんだろうな」と察し、聞こえないふりをする。

・店舗ごとの売上が記載された表を見ながら、「渋谷店は売上がガクッと落ちているから、何かが起きているかもしれない」とか、「原宿店は急激に売上がアップしている。店長に連絡して、どんな施策を打ったのか聞いてみよう」と動き出す。

これらはまさに「ファクト」から「示唆」を汲み取った上で何かしらの行動をしており、示唆によって突き動かされた具体的なシーンと言えるでしょう。

また、よく言われる「オンナの勘」はまさに示唆で溢れています。

・デートの時、携帯を裏返しに置く男は浮気しているに違いない。

・いつもは誰と行くとか言わないのに、金曜日のある飲み会の時だけ「先輩の○○さんと飲んでくる」と言う男は浮気しているに違いない。

これらも「ファクト」とファクトから言えること=「示唆」で構成された発言です。

しかしながら、これらの発言のほとんどは、自分の過去の経験、もしくは誰かから教えてもらったこと=他の人の経験からの発言です。

つまり自らが経験したこと、過去にあったことからしか示唆を言えないポンコツということになってしまいます。

この本のテーマに添った表現をすれば、「答えのあるゲーム」でしか使えないということになります。

高松智史『「答えのないゲーム」を楽しむ 思考技術』(実業之日本社)
高松智史『「答えのないゲーム」を楽しむ 思考技術』(実業之日本社)

本書の目的は「答えのないゲーム」において勝利することです。

ですから、この章では皆さんに「答えのないゲーム」における「示唆」の使い方をお伝えします。

経験したことのない「ファクト」に対峙しても「示唆」を感じ取り、それを言葉にできるようになれば、答えのないゲームを有利に進めることができます。

ようこそ、示唆の世界へ。

さようなら、ファクトだけの世界。