不動産を売却するときには、何に気をつけるべきか。『悩める売主を救う 不動産エージェントという選択』(幻冬舎メディアコンサルティング)を書いた不動産コンサルタントの長嶋修さんは「日本ではアメリカでは禁止されている『両手取引』という商慣行が続いている。不動産会社の『値下げしないと売れない』という言葉を信じてはいけない」という――。
不動産の需要が供給を上回っている
不動産価格の高騰が続いています。国土交通省が公表した2022年7月の不動産価格指数は、戸建て住宅が116.2、マンションが183.4と、2010年にくらべてそれぞれ1.16倍、1.83倍となっています。
価格が高騰する理由としては、コロナ禍やウクライナ戦争による資源高・建築費の上昇がありますが、それだけではありません。
物の値段は需要と供給によって決まります。日本で不動産価格が高騰しているのは、不動産を買う「需要」に対して、「供給」が少ないということを表しています。
つまり「売り手市場」だということです。
「売り手市場」がもたらす歪み
こうした状況はなにもいまになって始まったわけではありません。
日本の不動産価格は、戦後の住宅難の時代やバブル期を通じて、右肩上がりで推移してきました。
人口の増加や経済成長にともない、住宅の「供給」を、「需要」が上回ってきたということです。
その後バブル崩壊後に「需要」が落ち込み、不動産価格は下落しましたが、「失われた30年」を振り返ると、不動産業界の状況はあまり変わっていないと言えるでしょう。
そうした「売り手市場」が、日本の不動産業界に、顧客の利益を一段下に見るような文化をもたらしたのかもしれません。