不動産会社にとっておいしい「両手取引」

なぜこの不動産会社はこうした対応をしていたのでしょうか。

その答えは、「両手取引」を狙っていたからです。

不動産の取引では、売主と買主の間に不動産会社が入り、取引を仲介する代わりに、手数料を得ます。

この際、売主側からも、買主側からも手数料を得ることを両手取引と言います。

1つの売買で手数料を2度得るのですから、不動産会社にとっては「おいしい」取引となります。

不動産会社は「両手取引」を狙っていた
写真=iStock.com/venuestock
不動産会社は「両手取引」を狙っていた(※写真はイメージです)

「売主が700万円損する」のは承知の上だった

先ほどのケースでは、不動産会社は、Aさんのマンションを、相場より安い4700万円でリフォーム前提の買取業者に売却しようとしていました。

4700万円で売却すれば、不動産会社には手数料として、不動産価格の3%、141万円が入ります。

その後、この買取業者がリフォームしたAさんのマンションを6000万円で再度販売すれば、不動産会社は再び手数料3%、180万円を得られるというわけです。

この取引を実現するため、不動産会社はAさんが損をする取引なのは承知の上で、他の申し込みをすべて断っていたのです。

エージェントの調査結果を受けて、Aさんがあらためて5300万円で販売開始したところ、無事希望価格で売却できました。

当初の不動産会社の言う通りにしていたら、Aさんは700万円も損していたことになります。