10人家族、5歳の少女は飢えて死んだ…
2020年には、大家族の少女が餓死したという事件が報じられた。インド通信社のエクスプレス・ニュース・サービスは、北東部ジャールカンド州の州都ラーンチーの街において、10人家族の家庭で暮らしていた5歳の少女が意識を失い、死亡したと報じている。
この家庭では父親が2カ月間出稼ぎに出ており、学校からわずかな配給食を得ていたほかは、現金を入手する手段がほぼ途絶えていた。母親は通信社に対し、「家には食べられるものなど何もなく、そのため(娘の)ニマニは昨晩、飢えで死んでしまいました」と痛む胸の内を明かしている。
このような飢えは、首都ニューデリーを含む至る所で発生している。だが、ヒンドゥー紙は今年5月、「どの州でも餓死者は確認されていない――中央政府が最高裁に報告」と報じている。インド政府は、餓死者など一切出ていないとするスタンスを保ちたいようだ。
「男の子がほしいから」赤ちゃん殺しが横行する理由
男児を望んで6人を生んだ家族の例を先に紹介したが、さらに極端な執着を見せる家庭も多い。果ては、分娩直後に女児を殺すという「嬰児殺」にまで発展している。
米フォーブス誌は2020年、サイエンス・ライターのアヌラーダ・ヴァラナシ氏の寄稿記事を掲載している。氏はインド政府が出生前の性別検査を違法化したにもかかわらず、嬰児殺や堕胎行為が「インド全土で横行している」と指摘する。
インディアン・エクスプレス紙は2011年のインド国勢調査の数字を引用し、女児の出生数が男児に対して年間40万件ほど不自然に不足していると指摘する。多くの女児が性選択の犠牲となり、殺されていることを意味する。
この水準は、世界的にも異常な数字だ。バンガロールのメディアであるロジカル・インディアンは、世界で不自然に不足している女児の数のうち、実に半数をインドが占めると報告している。
現在はやや改善傾向にあるものの、2005年から2010年にかけてのインドでは、毎年160万人の女児の命が奪われていたと推計されている。
同棲相手を35個に切り刻む事件が示す「女性軽視社会」
女児の命が軽視されているだけでなく、成人女性への虐待もインドでは横行している。女性への性暴力および物理的な虐待問題は絶える気配を見せない。
英BBCは11月、インドでのおぞましい「冷蔵庫殺人事件」を報じた。デリー在住の27歳女性が、3年間同棲していた男に殺害されたという事件だ。
男が女性を虐待している様子が頻繁に目撃されていたが、警察の調べによると男は5月に女性の首を絞めて殺害し、遺体を35個に切り刻んで冷蔵庫で保管していた。数カ月をかけ、森や池など市内の複数箇所に少しずつ棄てていったという。
この事件はインド社会にショックを与えた。これまで半ば当然とされてきた女性への不当な扱いに関し、一件をきっかけに猛烈な議論が巻き起こっている。