インドの社会科学者であるプレム・チョードリー氏はトリビューン紙への寄稿を通じ、問題の殺害・死体遺棄事件は「女性への暴力に鋭いスポットライトを当てた」と述べている。事件には身近なパートナーによる「物理的、感情的、性的、そして精神的な暴力」が複雑に関与していると解説している。
さらにこれは、インド社会で当然のように横行している「児童婚、強制的な結婚、持参金という暴力、(中略)『名誉の殺人』、(劇物を顔にかける)アシッド・アタック、そしてレイプ」など、女性が受けている広範な不利益に再考を迫るものだとチョードリー氏は述べる。
持参金とは、妻側の家庭を経済的不利に追い込む悪しき風習を指す。インドでは結婚にあたり、妻側の一家が夫側の家族に対し、金銭や家財を貢ぐ習慣がある。1960年代から法で禁止されているものの、現在でも風習として残る。間接的に、子供に男子を望む動機ともなっている。
名誉の殺人も、女性への不当な待遇を指す用語だ。女性の親族が「本人の名誉を守る」名目の下、婚前交渉などを行った身内女性を殺める風習を意味する。
一部地域では半数が近親婚
家族計画に関しては、教育の浸透する南部では改善しつつある。
ヒンドゥー紙ビジネス版は、1000人あたりの年間出生率が南部州で15人前後となっており、北部の20人以上と比べて大きく改善したと報じている。
だが、その南部ではまた、別の問題が持ち上がっている。近親婚の割合の高さだ。
同紙は、インド政府による国家家族保健調査のデータを引用している。それによると南部5州においては、依然として非常に高い割合で近親婚が行われているようだ。
最も割合が高いのは、バンガロールの位置するカルナータカ州だ。その割合は実に48.4%となっており、全体の半数近くが近親者と結婚している計算となる。
同州も含め南部5州ではいずれも約15%以上と、近親者同士の結婚が無視できない割合を占める。インドでは、見合い婚の風習が今も色濃く残る。信頼できる身内同士を結ばせた方が安心だという親側の心情が強く影響しているようだ。
ヒンドゥー紙は、インドのデータサイエンティストであるニラカンタン・RS氏による著書『South vs North: India's Great Divide(原題)』から、近親婚は悪ではないとの立場を紹介している。
著書を通じて氏は、「血縁者との結婚に関しては、女性が一家と面識がある場合、より熱心に尽力するということが文献により明らかになっています」と述べているという。
だが、近親者同士の遺伝子は類似していることが多い。互いの遺伝上の弱みを補い合えないことから、近親婚による子供は特定の疾患や体格上の異常を生じやすいとされる。