どんなときに感情が乱れやすいか知っておいて損はない

「バカになる」現象は、人間ならば全員に起こります。しかし、その自覚を持って気をつければ、人は賢いままでいられます。

そこで必要となるのが、自分がバカになってしまうのはどんなときか、いつ、どんな場面で感情が乱れやすいかを知っておくことです。

人間全般が、どんなときに「バカになる」かを知ることもきわめて有意義です。国民性や県民性、「この会社では」「うちの家族は」といった自分の属する社会の傾向もつかんでおくとさらにいいでしょう。

つまり、生きていくなかでしてしまいがちな「失敗」について、詳しく知ることが大事なのです。

工場や建築現場などでは、事故に結びつきそうな危うい場面を「ヒヤリ・ハット事例」として共有し、ミスの起こりやすいポイントに掲示するなどして注意喚起を行います。「バカになる瞬間」対策としても、これをすればいいのです。

自分は失敗しうるという前提

私がこの手の話をすると、「自分が失敗する可能性なんてイメージしたくない」という反応がよくあります。

私がこれまで数多く書いてきた受験勉強の本のなかでも、ミス対策のために受験生がしがちな失敗をいくつも挙げている本は、受験生が買いたい本ではなかったようです。

しかし、点数を上げるための勉強をいくらしても、ミスのために不合格となる生徒が毎年おびただしい数に上っているのが事実です。問題を解く力を磨くだけでなく、ミスを防ぐ「守り」も固めておかないからそうなるのです。スポーツでオフェンスばかり強化して、ディフェンス力はまったく鍛えないようなものです。

スポーツの世界では、体づくりの方法も、勝つための練習法も、どんどん合理的になっています。「うさぎ跳びでグラウンド10周」の類の根性論はもはや遠い過去のものです。ところが勉強では、いまだに根性論が幅を利かせているのだから不可解です。

勉強にしろ、「バカになる瞬間」対策にしろ、「自分は失敗しうる」という、当たり前の前提に立つことが重要です。

なのに、なぜ抵抗を覚えるのか。そこには、日本人特有の感情の傾向があるように思えます。