年金は何歳でもらうのが一番トクなのか。社労士の増田豊さんは「75歳から繰り下げ受給すると、年金額は約2倍になるが、平均余命を考えると、総額では損をしてしまうこともある。『プラス12年の法則』を踏まえて検討してほしい」という――。
※本稿は、増田豊『結局、年金は何歳でもらうのが一番トクなのか』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
年金額が約2倍に増える「75歳への繰り下げ」
「年金、何歳から受け取り始めるのがよいのでしょうか」
こう私に尋ねてきたのは、Aさんです。
Aさんは64歳。60歳で勤め上げた会社の定年は迎え、いまは再雇用で働いています。
これまでは、ただ漠然と「65歳になったら年金を受け取って、『できる範囲』でのんびり暮らしていこう」と考えていたそうです。
2022年4月の年金大改正で、受け取り開始年齢を75歳まで先送りできるようになり、受け取り開始の年齢が気になりだしたそうです。
最近、友人や知人の中にも「70歳でも80歳でも、働けるうちは働く」という人が増え、受給開始の時期をもっと後にしてもいいのではと考え始めたそうです。
もうひとつ、Aさんが気にしていることがありました。
今回の年金大改正によって受給開始の年齢を75歳まで繰り下げると、受け取れる年金額が84%も増額。つまり「2倍近くに増える」のです。
Aさんの質問に対して私の回答は、「まずは70歳への繰り下げを検討してください」でした。
75歳まで繰り下げると年金は1.84倍に増額されますが、75歳ではなく70歳からの受給をおすすめしたのです。
なぜでしょうか。それは、平均余命(平均寿命)を考えた結果です。