預貯金や公的年金だけでは老後暮らせない

8月末、金融庁は「令和5(2023)年度税制改正要望について」を公表した。その中で最初に記載されたのが、“少額投資非課税制度(NISA)”の改善要望だ。それはNISAの利用者であるわたしたちにとって非常に大きな意味を持つ。2014年にNISAがスタートしたことは、“貯蓄から投資へ”の流れを加速させる起爆剤になると期待を集めた。

ユーロや円などの紙幣
写真=iStock.com/baona
※写真はイメージです

ただ、現時点でNISAは時限措置だ。NISAの恒久化は早期に実現されるべきだ。ここでいう恒久化とは、少額投資非課税制度そのものを恒久化することと、非課税保有期間を無期限にすること、を意味する。

利用者にとってNISAの最大のメリットは、世界経済のダイナミズムをより効率的に享受し、長期の視点で資金を運用することにある。それは、わが国の個人が、より安心した人生を送るために欠かせない。1990年代以降、わが国の経済成長率は低位に推移し、賃金はほとんど増えていない。財政の悪化も深刻だ。預貯金や公的年金に頼って“人生100年時代”を送ることに不安を抱く人は増えている。

個人にとって自らの責任で必要な資金を運用し豊かな人生を目指すことの重要性は一段と高まっている。NISAの恒久化などは、人々のライフスタイルに合った、より柔軟かつ持続的な資金の運用を可能にするだろう。

そもそもNISAとは何なのか

NISAを活用することによって、毎年、一定の金額の範囲内で行う株式投資などから得られる利益に税金がかからなくなる。NISAを用いない場合、利得の約20%に税金がかかる。その差は大きい。

現在、NISAには3タイプある。まず、“一般NISA”は20歳以上の人が対象だ。2028年までが新規投資の可能期間であり、非課税期間は5年、投資枠は年120万円、非課税の限度額は600万円だ。運用は、上場株式、株式投資信託などで行う。5年が経過すると、煩雑な手続きを経て新たな非課税投資枠に資金を移管できる。

次に、“つみたてNISA”は20歳以上を対象とし、2042年まで新規投資が可能だ。非課税期間は20年、投資枠は年40万円、非課税の限度額は800万円だ。一般NISAとつみたてNSIAは併用できない。未成年が対象の“ジュニアNISA”は親権者などが口座の管理と運用を行う。

非課税期間は5年、投資枠は年80万円、非課税限度額は400万円だ。2024年に一般NISAは“新しいNISA”に移行し、ジュニアNISAは廃止される。