※本稿は、大空幸星『「死んでもいいけど、死んじゃだめ」と僕が言い続ける理由 あなたのいばしょは必ずあるから』(河出書房新社)の一部を再編集したものです。
「孤独に耐えるのが強い人間」なのか
なぜ僕たちは「孤独なのは恥ずかしいこと」「人に頼るのは弱いこと」と考えるようになったのでしょう。そして、相手に遠慮したり、自分の内側に引きこもったりして、ますます孤独を感じるようになったのでしょう。
それは、「一人で孤独に耐えるのが強い人間」「自分のことは、すべて自分で責任を取らなければならない」といった思い込みが、いつの間にか社会や家庭に浸透したからだと僕は考えています。
これらの考え方は一見間違ってないようにも思えますが、はたして本当にそうでしょうか。
人間は協調性を持って支え合う生き物です。また、僕たちの社会がそれぞれの支え合いで成り立っているのも事実です。
そう考えると、孤独を美化したり行き過ぎた自立を求める考え方は、じつは、単にそう思い込まされているだけで、決して正しいものではないとわかるのではないでしょうか。
お互いが支え合うよりも、一人で生きていくほうが強い人間だ。
人に頼るのではなく、自分の人生の責任は自分で取らなければならない。
このような根拠のない思い込みを心理学用語で「スティグマ」と言います。
これは、弱者に対するいわれのない「差別」や「偏見」を意味しますが、もともと古代ギリシャで生まれた言葉で、家畜や身分の低い人に押す烙印のことでした。
簡単に言うと、いつの間にか植えつけられた間違った思い込みがスティグマです。
人間が気づかないうちに持っているスティグマ、特に「自分の問題はすべて自分の責任」という考え方は、僕たちを苦しめる原因になります。「これは自分の問題だから人に頼るべきではない」と考え、孤独を深めてしまうからです。
ここでは、このような間違った思い込みのせいで、僕たちは人に頼れず孤独を感じがちなのだと気づいてもらえれば十分です。