天皇皇后両陛下の席次は英連邦の次に
在位70年という歴代最長の英国君主だったこともあり、国葬では各国を代表する参列者の席次も大きな話題になった。英国は、かつての植民地などから構成される英連邦(Commonwealth)の宗主となっており、いまだに国王が各国の元首を務めている例も多い(英連邦諸国すべてではない)。
国葬では同盟国よりも英連邦諸国を優先し、カナダなど各国首脳の席を前列に置いた。これを見た北米各紙に「(普段は国力で負けている)カナダのトルドー首相のほうがバイデン米大統領(14列目)よりも席が前だった」と大いに揶揄されてもいた。
ちなみに、天皇皇后両陛下はマレーシアのアブドゥラ国王の次の序列に座っていたとされる。マレーシアはかつてシンガポールと共に「英領マラヤ」だったことで、今でも英連邦の一角を占める。
街には半旗が掲げられ、喪服が飛ぶように売れた
こうして、エリザベス女王の国葬は伝統的な慣習と、女王自ら長年実践してきた「国民に身近な王室」を体現したような儀式として幕を閉じた。王室と連邦国とのつながりを継承しつつ、新時代の王室を思わせるような演出は、普段は政治思想などバラバラな英国市民の心を強くつかみ、連帯感を生んだかのように思えた。
実際、国葬当日は英国は休日となり、あらゆる場所で半旗が掲げられた。女王死去の報が伝えられた直後に街の様子を見に行ったというM子さんは「お店も公共施設も、目に付く旗は皆、半旗でした。英国中はもとより、欧州の各国でもこうした対応がとられたのでは」と語る。
人々が持ち寄った不用品を格安で売る街のチャリティーショップでは、女王死去の直後から喪服が飛ぶように売れたという。「店主の方に声をかけたら”喪服が一番売れる商品になる日が来るとは夢にも思わなかった”って言っていましたね。店頭のマネキンにも喪服が着せられていたのが目をひきました」(M子さん)。国葬までの数日間は喪服を着て花を持つ人々も多く見かけた。
これは筆者の体験だが、かつてローマ法王が亡くなった際、欧州中のあらゆる旗が半旗だったにもかかわらず、ある国の日本大使館の日の丸だけがそのまま掲げられていた。政教分離を憲法で定めているからなのかもしれないが、現地の人には「日本は敬意を示さないヘンな国だね」と言われ、返答に困ったことがあった。