無関心な層はいても、反対する人はいなかった

エリザベス2世英女王の国葬が9月19日、ロンドンのウェストミンスター寺院で行われた。各国の要人が2000人以上参列するという大規模なものだったが、大きなトラブルもなく、つつがなく終了した。女王の棺は市郊外のウィンザー城に運ばれ、昨年亡くなった夫・エディンバラ公フィリップ王配の隣に埋葬された。今頃は2人仲良く、ゆっくりしているのかもしれない。

日本では安倍晋三元首相の国葬が27日に控えているが、開催間近になっても「反対だ」「やめろ」という声は依然として大きいと聞く。一方、エリザベス女王の死去をめぐっては、一連の儀式に無関心な層はたしかにいるものの、国葬自体に反対する人は筆者が取材した限りでは見当たらなかった。この差はいったい何なのだろうか。

「11日間、ずっと喪に服していたよう」

筆者が話を聞いたのは、ロンドンに15年余り暮らし、「あらゆる王室行事を現場まで観に行く」と豪語する60代の日本人女性M子さんだ。過去数年間は、たまたま王室の慶事が続いたこともあり、「ティアラをかぶって目の前に現れたキャサリン妃の姿は、今思い出してもうるうるする」と王室オタクであることを隠さない。

女王が亡くなった9月8日から国葬までの間、11日間空いた。「事実上、この11日間はずっと喪に服していたように感じた」と語るM子さん。ずっとお通夜の気分で鬱っぽくなっていたが、「ロンドンに棺が運ばれてくるというのでいてもたってもいられなくなり、繁華街のど真ん中まで見に行った」という。

繁華街の広告ディスプレーが女王追悼画像に
写真提供=M子さん
繁華街の広告ディスプレーが女王追悼画像に

圧巻だったのは、ウェストミンスター宮殿に安置された女王の棺を弔問する人々の多さだった。行列の長さはなんと9.5キロ。「待ち時間は30時間に及ぶと政府から聞かされた時、そんなことありっこないと思ってたんです。ところが弔問の最終日ごろには24時間以上になったんですね」

弔問の行列には、サッカーイングランド元代表として知られるベッカム氏も10時間以上かけて市民と一緒に並び、途中で一緒に並んでいた人々にドーナツを振る舞ったとの逸話も伝えられている。現地報道によると、弔問客は最終的に25万人に達したという。