本丸の給与もどんどん減っているのはどういうわけか

その背景には、言うまでもなく企業が人件費を削減するためにありとあらゆる人事・賃金制度の変革を行ってきたからだ。

日本企業の賃金は、月給と賞与に分かれる。

月給は、基本給と諸手当で構成される。諸手当は2つあり、所定内手当(役付手当、交代手当などの職務関連手当と、家族手当、住宅手当、通勤手当などの生活関連手当)と、所定外手当(時間外労働、休日・深夜手当などいわゆる残業代が主)となっている。

まず基本給である。基本給はベースアップ(ベア)と定期昇給(定昇)が賃上げの二大要素であるが、ベアは労働組合との協議(春闘)で決まるが、経営側が最初に手をつけたのがベアの廃止・縮小だった。

実際に厚生労働省の調査による主要企業の賃上げ率は1997年の2.90%をピークに下降し、2002年には1%台に突入、03年は1.63%だった。長期低落傾向は今も続いている。さらに2000年初頭には自動的に昇給する定昇の凍結・見直しも進んだ。

年収200万円
写真=iStock.com/Yusuke Ide
※写真はイメージです

その流れを強力に後押ししたのは経済界だった。経営側の春闘方針のバイブルとされる日経連(現経団連)の「労働問題研究委員会報告」(2002年)は、「これ以上の賃上げは論外、ベア見送りにとどまらず、定期昇給の凍結・見直しなどが求められる」と企業にハッパをかけている。

定昇は少なくとも1990年代前半までは、大手企業であれば入社時から定年退職の60歳まで支給されていた。

しかし2000年以降、定昇額の縮小や支給年齢の前倒し、あるいは廃止など見直しが進んだ。2004年に産労総合研究所が、今後定昇をどうしていくかを調査している(春季労使交渉にのぞむ経営側のスタンス)。それによると「現状を維持する」企業が30.2%、制度は維持するが「定昇額を縮小」する企業が26.4%、「適用対象を限定する」企業が15.1%。今後「定昇制度は廃止する」企業が17.0%となっている。

では、その後どうなったのか。日本生産性本部が2013年に上場企業に実施した調査(第14回日本的雇用・人事の変容に関する調査)によると、定昇がある企業は67.6%。

「特に年齢や勤続年数に応じた定期昇給はない」企業が29.4%と約3割に達している。また定昇がある企業でも定年まで定昇がある企業は17.6%。「一定年齢まで定昇がある」と回答した50.0%の企業で最も多い「定昇停止年齢」は51~55歳の30.1%、次いで46~50歳の26.5%だが、36~40歳で打ち切る企業が14.8%もある。

ベアの廃止・縮小に加えて、定昇の廃止・縮小や適用年齢制限が基本給の上昇を阻んでいることは確実だ。

さらに2010年代以降進んだのが所定内手当の削減だ。とくに家族手当や住宅手当などの生活関連手当の削減が徐々に進行している。