家族、住宅手当、残業代の削減を着実に進行させる

人事院の調査によると家族手当を支給している企業は、2016年は83.1%だったが、19年に78.0%、21年は74.1%と減少傾向にある。住宅手当を支給している企業は16年に58.5%だったが、19年に52.2%に減っている(「職種別民間給与実態調査結果」住宅手当は20年以降調査なし)。

また経団連・東京経営者協会が2020年1~6月に実施した調査によると、従業員500人以上の企業の家族手当支給企業は76.9%、住宅手当は59.5%となっている(「昇給・ベースアップ実施状況」)。支給企業に今後どうするかについて聞いた質問では、家族手当を全廃または縮小すると回答した企業は合計8.6%、住宅手当は9.2%と1割近くに上っている。

ちなみに手当の平均支給額は1000人以上の企業で家族手当2万2000円、住宅手当2万1300円(厚生労働省調査、2019年11月分)。廃止されると計4万3000円が月給から差し引かれることになる。

給与明細
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廃止するのはもちろん人件費を削減するだめだが、その理屈付けに使われているのが職務給あるいは役割給と呼ばれるジョブ型賃金制度の導入だ。

つまり「ジョブ(職務)や仕事の成果とは関係のない属人手当を支払う必要はない」という欧米企業の考え方と同じ理屈だ。

月給に含まれる基本給からベアや定昇、所定内手当を次々と剝ぎ取っていくだけではない。かつては“第二の給与”と呼ばれた残業代も減少している。

所定外労働時間(残業時間など)もコロナ禍で大きく減少した。2020年を100とした所定外労働時間指数はコロナ前の2018年は117.5、19年115.1だったが、21年は105.2、最新の22年7月も109.8とコロナ前には戻っていない(厚労省の毎月勤労統計調査)。

また、OpenWorkの調査(2021年12月16日)によると、2013年の月間平均残業時間は46時間だったが、以降徐々に減少し、2021年は24時間。22時間も減少している。

仮に月給30万円の場合、46時間の残業代は10万7824円(160時間÷30万円×1.25)。それが24時間になると5万6256円。差し引き約5万2000円の減収となる。