※本稿は、津野香奈美『「不機嫌な職場」を科学する 悪意なきパワハラと攻撃を生み出すメカニズム』(SB新書)の一部を再編集したものです。
「ハラスメントしても出世できる」という現実
皆さんの周りに、部下を追い詰めてメンタル不調にさせた“実績”があるのに、なぜか出世していく人はいないでしょうか。日本では、こうした事例は珍しくありません。
この傾向は、研修の場でも如実に現れます。「パワハラをするポテンシャルをどのくらい持っているか」を見るためにリスク要因を回答してもらうと、一般社員では該当者が2〜3割であるのに対し、管理職では4〜5割、役員では6割以上、組織によっては9割に達することもあります。明らかに、「出世した人ほどパワハラ気質が高い」のです。
また、パワハラ行為者として訴えられた人へのヒアリングでも、周囲から「仕事ができる人だ」という評価が多く寄せられる傾向があります。被害者が訴えを起こしても、他の同僚が「確かにパワハラ的な言動はあるが、仕事ができるのでいてもらわなければ困る」とパワハラ上司を擁護する、という場面も珍しくありません。
被害者である部下自身から「能力が高いのは間違いない。パワハラ的な言動さえ直してくれれば一緒に働いて構わない」という声が上がることもあります。その結果、被害者も処分を望まず注意だけで終わり、むしろ「多くの部下に擁護された」ことで人望があると評価され、さらに出世するという現象が起きます。
パワハラしたのに甘い処分になるのはなぜ
パワハラ行為者として訴えられた人の処分を検討する時に、経営層が難色を示すという事象が発生することも珍しくありません。人事部、コンプライアンス部などの担当者が「これは明らかにパワハラの定義に該当するので、処分が必要だ」と伝えても、「いや、そうは言っても、このプロジェクトは○○さん(行為者)にしか任せられないから」などと経営層が強く主張し、結局「配置転換」で終わってしまうという嘆きを聞くことがあります。
では、なぜ経営層はパワハラ行為者を評価したり擁護してしまったりするのでしょうか。そこには、①経営層への教育が不十分、②マスキュリ二ティが高い人が経営層になっている、③経営層は最もハラスメント行為者になりやすい職位である、④人は自分と似た人を高く評価する傾向がある、という4つの要因が影響しています。

