パワハラした人を擁護してしまう理由
① 経営層への教育が不十分
経営層に対する研修は、まだ十分ではありません。約8000の企業を対象にした2024年の厚生労働省調査によると、「役員向けパワハラ研修の実施」率は55.7%にとどまっています。
ハラスメント防止を効果的に進めるには、権力を多く持つ上位層から順に教育を行う必要があります。中間管理職から始めてしまうと、「自分はパワハラを受けているのに、下には強く言えない」という板挟みが生じ、中間管理職が心身ともに疲弊する事態を招きます。トップから順番に価値観をアップデートしていくことが不可欠です。
② マスキュリ二ティの高い人が経営層になっている
弱音を吐かない、体力や精神的なタフさがある、勝つことにこだわる――こういったタフさは、マスキュリニティ(男性性)と定義され研究が進められています。マスキュリニティは男性の中だけでなく、女性にも備わっているものです。
しかし、一般に男性の方が女性よりもマスキュリニティ度は高く、そして多くの人はマスキュリニティの高さをリーダーシップと見る傾向があることがわかっています。研究によると「リーダーは男性がつとめるもの」という認識が根強く、「マスキュリ二ティの強い人ほどリーダーにふさわしい」と評価される傾向があります。
これは女性管理職も例外ではなく、1970年代の研究ではマスキュリ二ティの気質を持つ女性管理職の方がリーダーとして評価されやすかったことが示されています。
70件以上の研究を統合したメタアナリシスでも、上位のリーダーほどマスキュリ二ティをリーダー適性とみなし、それが他者の評価における認知バイアスにも影響することが明確に示されています。その結果、組織の中では男性の方がより評価され、男性が役員に占める割合も高くなるのです。
特に日本では、役員クラスに女性が極端に少ない現状が続いています。実際、2025年に日本総合研究所が上場企業3182社の役員を調べたところ、社内役員に占める女性比率はわずか3.7%に留まっています。組織の中では男性の方がより評価され、男性が役員に占める割合も高くなる傾向は、日本において特に顕著です。
③ 経営層は最もハラスメント行為者になりやすい職位である
社長や役員自身がハラスメントをしていたことが発覚した企業の例は枚挙にいとまがありません。
2025年には、伊澤タオルの代表取締役社長によるパワハラが報じられ、第三者委員会による調査が行われました。調査の結果、少なくとも2019年頃から2025年7月まで、同社長が従業員に対して「ボケェ、アホか」「給料泥棒」「うそつき」などの人格否定的な暴言、椅子を蹴るなどの身体的攻撃、有休取得への「サボり」発言、妊娠・育休取得者への「誰やそいつ」「話しかけるな」といったマタハラを日常的に行っていた事実が次々と明らかになりました。
同じく2025年には、化粧品メーカーであるディー・アップの社長からパワハラを受けた当時25歳の社員が自死したことが大きな話題となりました。社長は2021年入社のその社員に「野良犬」などと長時間にわたり叱責し、翌日も「弱い犬の方がほえる」と発言。社員はうつ病と診断され、その後自死に至りました。社長は辞任し、遺族に調停金1億5千万円を支払うことになりました。
厚生労働省の調査でも、パワハラ行為者として「会社の幹部(役員)」は「上司(役員以外)」に次いで2番目に多く挙げられています。職位別のハラスメント行為者の割合を見た民間調査では、係長・課長・部長・事業部長・役員と上位になるほど割合が高いことが明らかになっています。
上位層ほどハラスメントリスクが高い。この事実を直視し、経営層の言動を定期的にチェックする仕組みをつくることが、組織として不可欠です。


