20代課長を誕生させよう。そんな施策を打ち立てる大企業が増えている。日本企業の標準登用年齢の平均は課長で41.8歳、部長で49.3歳。人事ジャーナリストの溝上憲文さんは「専門家によれば、適性のある人材は100人中1~3人。課題はそうした若くして管理職が務まる人材をどう発掘して、育てるかです」という――。
時計のベルトを調整する男性の手元
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企業で盛ん「20代課長誕生」プランはうまくいくのか

若手社員を管理職に積極的に登用しようという動きが大手企業に広がっていると報じられている。しかも、20代の課長が誕生するという触れ込みだ。

たとえば、次のような事例がある。

NTT:管理職ではない社員を対象に基準を満たせば入社年次や年齢に関係なく早期に昇格・昇給できる制度を導入。20代で課長級の役職への抜擢も可能にする。

リコー:管理職への昇格試験や資格による登用制限を廃止し、20代半ばの社員でも実力次第で課長職に抜擢される。

パナソニックインダストリー:2022年10月から課長職と部長職の公募制を実施。20代の社員でも求められる条件に合致すれば役職に登用される可能性がある(パナソニックホールディングス子会社)。

テルモ:2022年4月から従来の14年程度かけて昇進する課長登用の条件を一新し、社内公募制により20代にも登用の道が開かれた。

近年、デジタル化によるビジネスモデルの変革が急速に進んでいる。DXに象徴されるように新しい価値やイノベーションの創造が期待される中で、若い人が活躍できる環境が求められているのは確かだ。

20代の有能な課長が誕生するのは望ましいことだろう。できる人が年齢に関係なくきちんと認められ出世する。個人的に親しい上司にかわいがられたとか、派閥力学とか、学歴や学閥とか、「仕事」とは関係ないことで誰かが出世して、真面目にやっている社員のやる気が失われるような事態を繰り返す会社は伸びるはずがない。

だが、難しいのは、登用の条件を緩和したり、公募制に変えたりしても、誰でも課長が務まるわけではないということだ。