日本にもイーロン・マスク流の電光石火の解雇劇が実現する日はやってくるのか。人事ジャーナリストの溝上憲文さんは「日本の経営者の中には、いらない社員を簡単にクビにできるなんてうらやましい、原則解雇自由にすれば人材の流動化が進んで社会や経済にとっても有益……そう考えている人も多い。しかし解雇された人が再就職先を簡単に見つけることは困難だ」という――。
レッドカードをこちらに見せる男性
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イーロン・マスク流の電光石火の解雇劇が実現する日

ツイッターやメタ(旧フェイスブック)などアメリカのIT大手の大量解雇が日本でも大きな話題になっている。

ツイッターは社員の半数の約3500人を削減。メタは1万1000人超の解雇を発表した11月9日に全社員にメールで詳細を通知。解雇対象となる社員は同日中に電子メールを含む社内の情報システムへのアクセスを遮断された。日本では考えられないアメリカ流の電光石火の解雇劇である。

いらない社員を簡単にクビにできるなんてうらやましいと思う経営者も多いかもしれない。また、アメリカのように日本も原則解雇自由にすれば人材の流動化が進み、社会や経済にとっても有益だという意見も少なくない。

たとえば麻酔科医の筒井冨美氏はプレジデントオンラインの連載で、大学病院の窓際の医師を解雇できるようにして医師の人材流動化を促せば地方の医療崩壊も防げるとしてこう書いている(2022年11月10日公開)。

「解雇規制緩和によってTwitter社のような大胆なリストラを可能にし、窓際の余剰医師を労働市場に戻すべきである。全世代にとってフェアな競争環境の整備こそが、大学病院の健全化や地方への医師供給を可能にするのではないだろうか」

年功序列と老人支配によって大学病院に偏在する窓際医師を解雇すれば、次の働き先を求め、確かに地方医療の人材不足が解消するかもしれない。