「がんがない」わけではない

がんも、健診でひっかからなかったからといって、安心はできません。定期健診はだいたい1年に一度ですから、たまたまその時に見つからなかっただけ、ということもあるからです。

そもそも会社の定期検診は、法律で決められた最低限の項目しかやっていないことも多く、胃や大腸の検査が入っていない可能性があります。胃がんならバリウムや胃カメラを使った検査、大腸がんなら便潜血(便に血が混じっていないか)の検査が必要です。

胸部のレントゲン検査も多くの人が受けていると思います。「『問題なし』だったから、肺がんではないということだろう」と思いたい気持ちはよくわかりますが、これも残念ながらそうとは言えません。

もともと肺のレントゲンは、結核という疾患の有無を確認する目的で始まった検査です。今は精度が上がり、肺がんが見つかることもありますが、それはかなりラッキーなケース。そもそも胸部のレントゲンだけで肺のすみずみを見ることは不可能で、肺がんがあってもレントゲンに写っていないということは、よくあります。がんを調べるためには、やはりがん検診が必要なのです。

リスクを下げる生活を心掛けて

こういった疾患は、発症するまでわからないところがありますが、だからこそ、わずかな不調でも無視せず、病院で診察を受けることが重要です。

人間は「正常化バイアス」の影響を受けやすく、異常があったとしても、「きっと大丈夫だ」「問題ないはずだ」と信じようとしてしまいます。

でも、健診でオールAだったからといって「まったく心配する必要はない」「多少の不調は無視しても大丈夫」というお墨付きをもらったことにはなりません。体の不調を感じたら、とにかく早く病院に行ってください。決してオールAを、「忙しいから後回しにしよう」という言い訳に使わないでほしいと思います。

特に40代、50代の女性は、さまざまな体の不調を「多分更年期のせいだろう」と放置してしまうことがあります。更年期障害の症状は幅広く、動悸や目まい、頭痛、しびれなど、重篤な心疾患や脳疾患の症状と似たものもあります。検査して何もなければそれでいいのですから、早めに受診することをお勧めします。

また、もちろん普段から、血圧を下げる、糖尿病の治療をする、コレステロールを下げるといった、発症リスクを下げる生活を心掛けてください。

(構成=池田純子)
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