夫婦の悩み相談が増えている
「家で夫や妻と過ごすのがつらい、しんどい」という悩みを抱えて精神科の外来を受診するというケースは昔からありました。ただ、最近はコロナ禍をきっかけとした在宅勤務で家族の時間が増えたせいか、こういった悩み相談が明らかに増えています。
外来を訪れるのは、パートナーと一緒にいることにストレスを感じ、抑うつ症状が出ている夫や妻です。相手に対する嫌悪感や恐怖心が激しく、家に帰るのもいやだと言う人もおり、「パートナーが帰ってくるのがこわい」「帰ってくるといやな時間が始まる」と言う人もいます。ストレスから動悸がする、夜寝られないといった相談もあります。
こうした悩みを抱える人の中には、パートナーに発達障害の特性があることがストレスにつながっていることもあります。必ずしも悩んでいる本人は、相手が発達障害である可能性までは思いついていないこともありますが、外来でお話を聞いていると、その可能性がありそうなケースも散見されます。詳しく見ていきましょう。
忘れものが多い、予定をすっぽかす
発達障害というのは一つの大きなカテゴリーで、その中にはさまざまな特性が存在しています。「ADHD(注意欠如・多動症)」「ASD(自閉スペクトラム症)」などがありますが、いろいろな特性がさまざまな割合で組み合わさっていることが大半です。そのため人によって特性の組み合わせや度合いも違いますが、この中からADHDとASDの典型的な特徴について、それがどのように家族間や夫婦間でストレスを生んでしまうのか紹介します。
ADHDの特性としてまず挙げられるのは、忘れものが多いことです。例えば朝、家を出て駅まで行ってから「財布がない」「スマホを忘れた」と取りに帰ってきたり、「駅まで持ってきて」と家族に頼んだり。それを朝の忙しいバタバタする時間に何度も何度も繰り返すので、家族もイライラしてしまいます。
ほかにも、週末に家族と遊びに出かける予定を入れていたのに、約束をすっかり忘れて休日出勤を引き受けてしまったりということもあります。注意すると、謝罪も反省もしますが、結局また同じことが繰り返されてしまうのです。