自己肯定感の低い人は、どうしたら前向きになれるのか。産業医で精神科医の井上智介さんは「『常に自己肯定感が高い人』はいない。そう見える人は、失敗して落ち込んだりしたときに気持ちを切り替えるスイッチをたくさん持っているだけだ」という――。
歩道橋にもたれかかりうなだれている女性
写真=iStock.com/AH86
※写真はイメージです

「常に自己肯定感が高い人」なんていない

自己肯定感がずっと高い人というのはいません。もちろん自己肯定感は高いに越したことはありませんが、ずっと高く保つことは不可能と言っていい。そして失敗して落ち込むのは当たり前のことです。特に、睡眠不足が続いているときや疲れがたまっているときに失敗して怒られたりすると、なかなか前向きな考え方に切り替えることはできません。自己肯定感の高い、低いは、その日の調子によっても変わります。

はたからみて「自己肯定感が高い」とされる人も、失敗して落ち込むことはあります。しかしこういう人たちは、落ち込んだ気持ちを切り替えるワザをたくさん持っているという特徴があります。自己肯定感が低い人は、こうしたワザが少ないために、なかなか気持ちの切り替えができず「自分はダメなんだ」と負のスパイラルに入ってしまうのです。

気持ちを切り替える“スイッチ”を持っておく

落ち込みやすい、へこみやすい、自分に自信が持てず、人に言われたことが気になってしまう……。こうした傾向があって「自己肯定感が低い」と感じている人は、自分に合った気持ちの切り替えスイッチをいくつか持っておくといいです。。私がお勧めしている、三つの切り替えスイッチをご紹介しましょう。

一つ目は「外に出る」です。気持ちが落ち込んだときやへこんだときは、何にも興味が湧かず、外に出る意欲が出てこないので、じっと部屋の中に閉じこもりがちになります。そうすると、さらに鬱々うつうつとした感情が続き、外からの刺激がないので、気持ちを切り替えるタイミングが生まれにくくなります。

ですから、まずは気分がのらなくても、靴をはいて玄関から出てみましょう。行先は遠くである必要はなく、近所でも構いません。しかし、できれば「初めての場所」に行ってみましょう。

家の近くにあるのは知っていたけど行ったことがなかった公園でもいいでしょう。目的地を定めず、通ったことのない道を歩くというのもお勧めです。仕事で落ち込むことがあった、いつもより疲れたというときは、いつもとは違う道で帰るというのもいいでしょう。

距離は近くてもよいのです。初めて行く場所は、見るものすべてが新鮮です。景色が少し変わるだけで、気持ちも変わるものです。普段とは違う、「非日常」が体験できますから、気持ちがリフレッシュされます。

もうひとつのおすすめスポットは「映画館」です。大画面と大音量で過ごす映画館は、手軽に非日常を体験できる空間。そこで、さらに感動して泣いたり、スリルでドキドキしたり、大笑いしたり、と感情が揺さぶられると、ネガティブな気持ちがリセットされて、気持ちが切り替えられます。