2022年上半期(1月~6月)、プレジデントオンラインで反響の大きかった記事ベスト5をお届けします。教育・子育て部門の第4位は――。(初公開日:2022年3月5日)
小さな子を育てるときは、なにに気をつければいいのか。東京大学名誉教授で日本保育学会前会長の汐見稔幸さんは「赤ちゃんを賢く育てるのは、実はとても簡単。4つの方針だけ守ればいい」という――。

※本稿は、『プレジデントベイビー 0歳からの知育大百科2021完全保存版』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

父親に抱かれた子供
写真=iStock.com/chachamal
※写真はイメージです

幼児期に育みたい「10の姿」

2018年4月から、幼児教育に関する指針が変わり、その中で「幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿」が示されました。

これは、変わりゆく社会に対応して「生きる力」を育むための教育改革の一環です。大学入試を始め、高校、中学、小学校に至るまで総合的にカリキュラムが見直されました。この教育改革に幼児期も無関係ではなく、新しいカリキュラムに変わった小学校にスムーズにつなげられるように、保育園・幼稚園・認定こども園が、共通の目標のもとに幼児教育に取り組んでいくことになりました。

~幼児期の終わりまでに育ってほしい10の姿~
●健康な心と体
●自立心
●協調性
●道徳性・規範意識の芽生え
●社会生活との関わり
●思考力の芽生え
●自然との関わり・生命尊重
●数量や図形、標識や文字などへの関心
●言葉による伝え合い 
●豊かな感性と表現

もともと保育園は児童福祉法における児童福祉施設、幼稚園は学校教育法における教育施設という位置づけで、同じようなことをしていても異なる理念のもとに運営されていました(認定こども園は両者を統合する施設で、認定こども園法のもとに運営)。しかし、今回は保育の目標である5領域の内容を共通化した上、さらに小学校ともつなげやすいように整理して10の目標が共通に定められた。これは大きな意味をもっています。

お子さんたちが生きるのは、変化が激しく先を読むのが困難な時代。新型コロナウイルス感染拡大のように、何が正解なのかはっきりわからない中で、世界の人たちと連携し問題解決に取り組まなければならない場面も増えてくるでしょう。このような時代だからこそ、保育者や教育者が一丸となって、共通の目標のもとに子どもを育てていこうとしているのです。

今後、幼児教育と小学校教育を一体のものとして実践する姿勢はどんどん強まるでしょう。

4つの方針を守れば将来必要な力は全部つく

ぜひ、ご家庭でも「10の姿」を大切に子育てしてほしいのですが、親御さんからしてみたら、あれもこれもやらなくてはいけないように感じて焦ってしまうかもしれません。しかし、これは達成目標ではなく、成長の方向性を示したもの。少しずつでも書かれている姿が見えるようになっていればよい。あくまで成長の方向性を確認するものととらえてください。

大事なことは、この「10の姿」を意識して育てるのは、難しいことではないということです。僕がこれから提案する4つの方針さえ守っていれば、結果として全部育ちます。子育ては実はとてもシンプルで簡単なもの。理由とともに詳しく解説していきましょう。