働かない長男が暴れ、父母と長女は逃げ出した

小林家は夫婦で商店を営み、暮らし向きは豊かといえないまでも、子供たちが幼い頃は、それなりに安定した生活を送っていた。そんな小林家の問題は、高校を中退してから一度も働いたことがない長男のことだ。

長男は幼い頃から、かんしゃく持ちの子供だった。気に食わないことがあると、その場を動かなくなり、機嫌を取るのも一苦労だった。中学生の頃からは、長男にとって気に障ることが起こるたび、父や母に暴力を振るってきた。学校でも問題行動をたびたび起こし、小林夫婦は学校に呼び出される機会も少なくなかったという。

暴力は徐々にエスカレートし、クラスメートに暴力を振るったことが原因で高校は中退している。小林さんの家の中は、長男が壊した跡がいたるところに残っているそうだ。写真を見せてくれたが、とても人が住める状態ではないほど、荒れ果てていた。

小林さんは長男が高校を中退した頃から、自治体に助けを求めている。自治体の職員が家を訪れて、病院の受診を勧めてくれたり、自治体の介入によって何度か措置入院をしたりしたこともあったそうだ。

しかしながら、長男の暴力は一向に収まることはなかった。措置入院から戻ると、入院させたことを恨んでかえって暴力がエスカレート。そんな長男のことを嫌って、次男(40)は大学の途中で家を出ており、もう何年も顔を見せていない。

歩道を歩く二つの人影
写真=iStock.com/AlexLinch
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長女(47)は家業を手伝っていた関係で、親元で我慢しながら暮らしていたが、長男の暴力が長女にも及び始めたため、15年くらい前に、父と母、そして長女の3人は逃げるように家を出た。自宅近くに賃貸マンションを借りて、現在まで、父、母、長女の3人で暮らしている。

長男の状態について話を聞く限りは、精神的な病気の存在を感じられるが、長男は「自分は病気ではない」と言い張って、20年以上病院の受診を拒んでいる。病名によっては障害年金の受給につながるはずなのだが、障害年金の申請に進める状況ではなかったという。