公務員として定年まで勤めあげ、団体職員として再就職に成功した60歳男性。持ち家(ローンなし)があり、預貯金も4000万円近くあり、数年働けば、あとは悠々自適の老後生活だが、男性は「28歳次男がひきこもりになった」と悩んでいる。しかし聞けば、次男はこの5年間で新卒就職、起業、倒産、再就職、解雇……と激動だったため慎重に職探ししていただけ。焦る父親が追い詰める構図が見えてきた――。
障子から覗く男のシルエット
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「ひきこもりを立ち直らせる業者にお願いすべきですか」

新型コロナの感染状況が完全に終息しないものの、社会活動を止めない“ウィズ・コロナ”の動きが広がっています。それとともに、ひきこもりの相談も増えてきました。

自粛期間中は目立たなかったひきこもりも、社会の動きが活発になるにつれて気になり、将来が心配になる人が増えてきたようです。ひと口にひきこもりといっても状況はさまざまで、家族の心配も千差万別です。

先日、相談に来られた60代の男性は、「次男がひきこもりになってしまい、将来が心配だ」と肩を落としています。

父親の依頼は、「次男を立ち直らせるにはどうすればよいか?」ということと、「今後、どのように生活していけばよいか、資金計画を作成してほしい」というものでした。

資金計画の作成は、ファイナンシャル・プランナーの得意分野です。家族の状況を踏まえて将来の家計状況をシミュレーションします。しかし、子供を立ち直らせるのは専門外です。そのことを伝えると、父親は言いました。

「ひきこもりを立ち直らせるという業者にお願いした方がよいのでしょうか?」

私は、こう提案しました。

「そのような業者は玉石混交で、良心的な業者を選ぶのはなかなか難しいです。まずは家族会などに参加して情報を収集されてみてはいかがでしょうか」

父親も納得しましたので、将来の家計状況をシミュレーションするために、家族の状況を伺いました。