焦る父親はすごい剣幕「このままでいいと言うのですか」

聞けば、相談者は定年まで公務員として勤めあげ、今年4月に市の関連団体に再就職しました。転職などしたことがありませんし、それは長男も同じです。それだけに転職を繰り返す次男が歯がゆいのかもしれません。次男の今後について悲観しているようです。

「お気持ちはわかりますが、もう少し様子を見られてはいかがでしょうか」
「このままでいいと言うのですか」

「そういうわけではありませんが……」父親の剣幕に私もたじろぎます。

そこで、少し話題を変えてみます。

ビジネス交渉中の男性
写真=iStock.com/fizkes
※写真はイメージです

「最近は、息子さんは外出されますか?」

「ええ。毎日のように外出していますが、最近は就職活動だけではなく、友人と会ったりしているようです」父親は不満そうです。

「それなら安心ですね」
「えっ! どういうこと?」
「息子さんはまだ、ひきこもりとは言えないでしょう。このまま仕事が決まらない状況が長引き、働く気を失ってしまうことが心配ではありますが、今はまだその段階ではないと思います」

私は説明を始めました。厚生労働省によると、ひきこもりの定義は「社会的参加(就学、就労、家庭外での交遊など)を回避し、原則的には6カ月以上にわたっておおむね家庭にとどまり続けている状態を指す現象概念」とされています。

つまり、コンビニなどの買い物以外では、家族以外とのつながりを閉ざしてしまう状況が続いているという状態です。私は父親にこう伝えました。

「社会との関わりを閉ざしてしまうと、“働く”という以前に、他者との関わりを持つことから始めなくてはなりません。その点、息子さんは就職したいという意欲はあるし、他者との関わりを閉ざしているわけではありません」

「なら、大丈夫だと言うのですか?」なおも父親は詰問調です。できる限り、やわらかい口調で私はゆっくりと話しました。

「仕事は、その人にとって生活の大部分を占めるものです。お金がもらえるのであればなんでも、とはなかなか割り切れません。希望の仕事にこだわる気持ちもわかります。それでも希望がかなわない場合には、条件を広げ、他の分野にも目を向けるような、気持ちの切り替えが必要です。その時こそ、お父さまのアドバイスが有効でしょう。その時まで、もう少し温かく見守ってみてはいかがでしょうか」