ビジネスホテル「ドーミーイン」には熱狂的なファンが多い。なぜなのか。ライターの古田島大介さんは「『露天風呂に本物の鈴虫を放つ』など、やりすぎともいえるサービスを連発している。お客様を満足させたいというスタッフの気持ちが異常に強いホテルだ」という――。
「天然温泉 豊穣の湯 ドーミーイン池袋」の大浴場。千葉県匝瑳市から運んできている天然の黒湯温泉になっている(写真は全てドーミーイン池袋のもの)。
撮影=古田島大介
「天然温泉 豊穣の湯 ドーミーイン池袋」の大浴場。千葉県匝瑳市から運んできている天然の黒湯温泉になっている(写真は全てドーミーイン池袋のもの)。

人気の大浴場は寮事業が礎となっている

ドーミーインは直近における顧客満足度調査の評価が高い。2021年の日本版顧客満足度指数(JCSI)調査によれば、ビジネスホテル部門で満足度1位を獲得している。

おもてなし溢れるサービスが評価されたことについて、ドーミーイン事業本部の水野貴史さんは「お客様と真摯に向き合い、どうしたら満足いただけるかを愚直に考えた結果だと思っている」と話す。

ドーミーインが開業以来、最も定番と言えるサービスが大浴場だ。

運営元の共立メンテナンスが、学生寮や社員寮などの寮事業を礎に成長してきたことから、“我が家のような寛ぎ”を追求し、ホテル経営においても「ビジネスマンが居心地よく過ごせる場を作ろう」と考えたそうだ。

「もともと全国に大浴場付きの寮を運営していたことから、大浴場を作るノウハウは持っていました。ビジネスホテルの客室にある手狭な浴槽よりも、手足が伸ばせる大浴場の方が疲れも取れ、お客様も満足してもらえるのではと思い、ゆったり寛げる大浴場を完備してきました。ホテル内に大浴場スペースを作ると、ワンフロアが潰れてしまって収益性の悪化につながります。ですが、お客様が喜んでくれてまたドーミーインに泊まりたい。そう思ってもらえた方がいいんですよ」(水野さん)

サウナブームが来るより前から設置

また、昨今にみるサウナブームより以前から、ドーミーインではサウナ室もホテル内に設置している。

当時の社員が銭湯に足繁く通っていた際、サウナと水風呂に目をつけ、「ドーミーインでも導入できたら絶対、お客様は喜んでくれる」と思い、サウナ室を大浴場とともに取り入れたという。

かくして、サウナ付き大浴場がドーミーインを象徴するサービスとなり、出張族やサラリーマンの心をつかんでいったのだ。