「満足させたい」気持ちが強すぎて、思わぬ大失敗も

お客様が喜ぶサービスを積極的に導入していく姿勢は、ホテル宿泊時の満足度を高めることに寄与する一方、ときに失敗を招くこともあるだろう。

過去の失敗事例として挙げてもらったのは、大浴場で心と身体を癒やしてもらうための空間づくりだ。

風情感じる露天風呂につかれば、出張で疲れた体を労わることができる。そこに、季節を感じる鈴虫の鳴き声も入れば、もっと安らげるのでは――。

そう思い、露天風呂に本物の鈴虫を放したところ、言わずもがな翌日には外に逃げていってしまったという。

「お客様に至福の癒しを届けたいと考えた末に生まれたアイデアで、結果としては失敗した形にはなりますが、現在は鈴虫の鳴き声がするBGMを導入し、好評をいただいております。このようにトライアル・アンド・エラーを重ね、何度も改善を繰り返しながら、サービスの改善に努めているんです」(上遠野さん)

露天風呂は風鈴が鳴り響き、癒やしを自然と感じられるような工夫がされている。
撮影=古田島大介
露天風呂は風鈴が鳴り響き、癒やしを自然と感じられるような工夫がされている。

「ドーミーインなら○○」と言われるようなサービスを考える

その一方で、サービスの導入を決める際の決め手となる基準などはあるのだろうか。

水野さんは「新しいサービスを出す際は、会議を重ねて決めていく」と述べる。

「大前提として、お客様第一になっているか。そして、『ドーミーインなら○○だよね』と想起してもらえるかを重要視しています。コストやオペレーションの観点はいったん抜きにして、事業部の社員や現場のスタッフがアイデアを出し合える文化があるので、毎月10~20個くらいのアイデアが上がってくることもあります。

そこに良い案があれば、宿泊代金に含められるか(オールインクルーシブ)収益構造を考えたり、専門の部署でオペレーションに落とし込めるか検討したりと、具体化していく動きをとります。こうしたアイデアの結集があるからこそ、ドーミーインは、他のホテルとは異なる“異端児”のようなポジショニングを築いてこられたのだと考えています」