クレームには代替案の提示とスピード対応を徹底
きめ細やかなサービスが随所に散りばめられているが、押し出してこない。こうした謙虚さは、寮事業の運営で育まれた「黒子精神」が端緒になっているという。
実際に筆者も「天然温泉 豊穣の湯 ドーミーイン池袋」に宿泊したが、水野さんに教えてもらわなければ気づかなかったサービスがたくさんあった。主だったサービス以外にも書き切れないほどのサービスがあり、ホテルに滞在するお客様のことを全方位で考え抜かれているのが伝わってきた。
しかし、図らずもお客様からクレームをいただくこともあるだろう。その際は「『できません』とは言わずに代替案を提案するのを必ず行っている」と水野さんは語る。
「できることとできないことを明確にし、代わりの案を返答した上で、できる限りスピーディーな対応を心がけています。そういう意味では、何か不満の声が上がったらすぐに実行できるような準備を日頃から行っているからこそ、素早く改善に動けるのだと思います。例えば、『大浴場に水分補給のペットボトルを持ち込んでもいいのか。コロナ禍だけれど話し込んでもいいのか』というお客様の意見に対しては、ルールをすぐに決めて、2~3日で全国のドーミーインに展開したんです。
コロナ禍でフルバイキング形式から小鉢に分けたセミバイキング形式に変更した際も、寮や高齢者住宅などのメニューも手がけるフーズ開発チームの知見や機動力を生かし、2週間で全ホテルの朝食メニューを変えることができました」
ライフスタイルの提案ができるホテルを目指したい
競合他社よりも、お客様と向き合うことを大事にしているドーミーインだが、今後は「ビジネスユースや観光目的以外のライフスタイルを訴求できるようにしていきたい」と上遠野さんは意気込む。
「ここ数年来でサウナブームが到来したことで、開業以来のサービスであるサウナ付き大浴場の見方が変わり、あらためてその魅力に気づくことができました。今の時代、ホテルが選ばれる理由にアクセス良好や良質な朝食のほかに、サウナの有無も入ってきている。
つまり、出張や観光のみならず『サウナに入る』といったライフスタイルの提案ができるホテルを目指していきたいと思っています。ドーミーインには“DOMINISTYLE部活”と称したサウナ部や料理部、釣り部といったコミュニティがあるんですが、このような趣味のニーズを取り込んだ専用の客室を設けることで、新たなホテル滞在の形を見いだしていければと考えています」