成功事例3:マイクロソフト
嫉妬心から這い上がった企業の事例として、マイクロソフトを紹介しよう。マイクロソフトは、パソコンOS「ウィンドウズ」とビジネス用ソフト「マイクロソフト・オフィス」で、パソコン時代の世界トップの座を掴んでいた。しかし、パソコンからスマートフォン(以下、スマホ)へ時代が移るにつれ、新しいベンチャー企業のGAFAに次々と追い抜かれていってしまった。
ネット検索はグーグル(G)、スマホはアップル(A)、SNSはフェイスブック(F)、クラウドビジネスではアマゾン(A)がそれぞれ王者となり、マイクロソフトは「スマホ時代に乗り遅れた過去の王者」と言われるようになった。ここで、「もう自分たちの時代じゃない」と、敗北を受け入れて停滞する未来もあっただろう。しかし、マイクロソフトは自社を大改革して、弱みを克服し、新たな強みを作ってGAFAに挑んでいく道を選択した。
「パソコンにこだわらない」が成功のカギに
GAFAに良い嫉妬を抱き、マイクロソフトは売上高10兆円、社員12万人という巨大組織のミッション(存在理由)、カルチャー(企業文化)、そしてビジネスを劇的に変革していった。まず、「すべてのデスクと、すべての家庭に1台のコンピュータを」としていたミッションを、「地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする」へ変更した。つまり、もうパソコンにこだわらないことを宣言したのである。これを上層部から現場まで全社員に浸透させ、企業全体の意識をガラリと変えた。
保守的な大企業体質になっていたカルチャーも、ベンチャーマインドへ一新した。「成長しよう!」「リスクを取ろう!」と呼びかける「グロース・マインドセット」と、スマホとクラウドの領域に挑戦者として挑んでいく「モバイルファースト、クラウドファースト」。この2つの単語を社内で多用し、現場にチャレンジ精神を取り戻させた。
そして、ビジネスそのものも変革した。自社のパソコンOSだけで使えるソフトをやめ、どのパソコンでもスマホでも使えるクラウドサービス「オフィス365」を開始した。そのために社長自らがライバル各社を訪れ、アップルとも提携を結んだ。こうした改革が実を結び、2018年11月、マイクロソフトは8年ぶりにアップルの時価総額を上回って世界トップに返り咲いた。