「いつかはクラウン」から40年…
クラウンがモデルチェンジして16代目となった。新型クラウンはなんと4つの異なるタイプがあるラインアップとなった。
デザイン的にも今までのクラウンの伝統とはまったく異なるもので、発表会の会場にいたすべての人を唖然とさせるものだった。私自身も広告会社に勤務していた時代に10年以上にわたってコミュニケーション立案に携わっていただけに、ある種の固定観念があり、非常に衝撃を受けた。
クラウンは1952年、当時社長だった豊田喜一郎の長年の夢だった本格的乗用車の実現に向けて開発がスタートし、1955年に戦後トヨタ初の本格的乗用車として発売された。現在の日本車の中で最も長い歴史を誇る車名ブランドである。
1989年にレクサスが生まれるまではトヨタの量産車ラインアップの中の頂点という位置づけで、日本を代表する高級車として日本人の憧れとなり、「いつかはクラウン」といわれる存在だった。この「いつかはクラウン」というのは広告のキャッチコピーだが、実際のユーザーインタビューで出てきた言葉をそのままコピーとしたものである。
その高級感・ステータス感からバブル時代には大人気となり、全盛期の1990年には年間20万台を超えるほどの販売台数を誇っていた。質・量両面でまさに日本を代表する高級車だった。
最高級車がいつしか高齢者イメージの車に…
しかし、バブル崩壊以降、販売台数は少しずつ減少していくことになる。
ユーザー数の多い車種だけに、ユーザーの声に基づいた開発によるモデルチェンジが続いていった。そうなるとクラウンを乗り継ぐユーザーは年を経るごとに高齢化していくことになる。
そのような開発姿勢では、既存ユーザーはそれほど減らないが、若い新規ユーザーが入ってこなくなり、どんどん代わり映えしない、高齢者イメージのモデルとなっていったのだ。
若返りを果たすべく走行性能を高めたり多少スポーティーな外観にしたりしたが、既存ユーザーの確保も重要なマーケティング課題であるため、セダンというフォーマル性の高いボディ形式は踏襲され、デザイン的にも「クラウンらしさ」を維持してきた。
それが結果として十分な新規ユーザーの獲得にはつながらず、2018年に発売された15代目は発売初年度でも5万台程度の販売にとどまり、昨年(2021年)は2万台強というレベルにまで落ち込んだ。