「トヨタブランド」の限界を超える
海外でクラウンを発売する場合、大きな問題がある。クラウンは高級車である。つまり高価だ。日本でのトヨタのイメージは小型車から高級車まで幅広く取りそろえるメーカーというイメージだが、海外の車種ラインアップは日本に比べ大きく少ない。
セダンでいえば、トヨタブランドの上限はカムリクラスであり、一部の国でカムリより一回り大きいアバロンがあるにすぎない。アバロンでも4万5000ドルくらいが上限だ(アメリカの場合)。
SUVにしても超大型のセコイアやランドクルーザーを除けば主力は4万5000ドル程度が上限である。それ以上の価格帯はレクサスが受け持つというはっきりした構成になっている。
それが今まで海外でクラウンを売ってこなかった理由でもある。クラウンを海外に導入するということは、トヨタブランドを上に引き上げることを意味するのだ。
こうなると車の作り方も考慮しなければならない。
クラウン史上初の横置きエンジン化
先代の15代目クラウンはTNGA-Lという、レクサスLS/LCと共通する後輪駆動プラットフォームを使っている。高級車用の高価なプラットフォームである。
レクサスでさえ、ESやRXといったクラスまでは前輪駆動ベースのTNGA-Kを使っていることを考えると、贅沢な作りである。
海外のトヨタディーラーでクラウンを売ることを考えた場合、既存のラインアップとの関係から考えてクラウンの価格はある程度抑える必要がある。日本でも新しい客を大きく伸ばすためにはあまり高価にはできない。
となると、新型クラウンもコストダウンのためにTNGA-Kを使うしかない。これでクラウン史上初の横置きエンジン化が決まったといえる。
現在発表されているのはすべて後輪の駆動に電気モーターを使った4輪駆動モデルだが、ゆくゆくはより廉価な前輪駆動モデルが加わる可能性もあるだろう。