原材料の価格高騰などで、「100円ショップ」という業態が岐路にある。経営コンサルタントの鈴木貴博さんは「業界首位のダイソーは300円ショップ業態に進出した。しかし、100円と300円ではビジネスモデルが大きく違うため、成功するとは限らない」という――。
東京・銀座に開店する100円ショップ「ダイソー」の旗艦店=2022年4月13日、東京都中央区
写真=時事通信フォト
東京・銀座に開店する100円ショップ「ダイソー」の旗艦店=2022年4月13日、東京都中央区

「100円ショップが100円」なのは日本ぐらい

みんなが大好きな100円ショップですが、そのビジネスモデルが岐路に立たされています。原油価格の高騰でプラスチックが値上がりし、円安で中国やマレーシアなどからの仕入れコストも上昇しています。日本全体が値上げラッシュでもう100円で商品を提供するのが限界まで来ているのです。

そもそも世界中を見回しても100円ショップで商品が100円で買えるのは日本ぐらいです。ダイソーの会社案内(2021年)に書かれている海外店舗での価格を今の日本円に換算するとアメリカ(1.5ドル)、中国(10人民元)、香港(12香港ドル)、ブラジル(7.99レアル)と世界中の広い地域でだいたい「200円ショップ」という水準になっています。

均一価格の水準がもっと高い国や都市もあります。タイ(60バーツ)が227円、ドバイ(7ディルハム)が257円、そして日本から見れば一番物価が高い国のひとつであるオーストラリア(2.8豪ドル)では264円という水準です(いずれも8月8日時点)。

努力に努力を重ねて、いよいよ限界が来ている

日本の消費者は「安くなければ買わない」という特性が強いのです。このため、他の国では200円で売る商品を、日本でだけ100円で売っているというのが100円ショップ業界です。仕入れ先を高コストの中国から安い東南アジアに移したり、中に入っている商品の個数を減らしたり、商品を小さく薄くしてプラスチックの使用量を減らしたり。努力に努力を重ねてきましたが、いよいよ限界が来ているというのが現在の状況です。

100円ショップ業界では業界2位のセリアがそれでも100円均一を維持しています。一方で、首位のダイソーやキャンドゥ、ワッツなどでは200円商品や300円商品を増やしています。そしてその延長線上の戦略として、「100円ショップではない高価格業態」への進出が始まっています。

この高価格業態戦略は成功するでしょうか? 100円ショップ業界の生き残り戦略を探ってみたいと思います。