世界全体で食糧危機が起きている

2022年5月、わが国の消費者物価指数は前月と同じく前年同月比で2.5%上昇した。その背景要因の一つとして、生鮮食品をはじめとする食品の価格上昇は大きい。複合的な要因によって穀物や食用油、葉物野菜など多くの食品の価格が上昇している。

2022年2月17日、レギュラーガソリン171円と書かれたガソリンスタンドの看板。経産省発表のレギュラーガソリン1L当たりの店頭価格(14日時点)は、全国平均で171円40銭と6週連続の値上がり。ウクライナ情勢の緊迫化で原油価格の高騰が続いた(東京都港区)
写真=時事通信フォト
2022年2月17日、レギュラーガソリン171円と書かれたガソリンスタンドの看板。経産省発表のレギュラーガソリン1L当たりの店頭価格(14日時点)は、全国平均で171円40銭と6週連続の値上がり。ウクライナ情勢の緊迫化で原油価格の高騰が続いた(東京都港区)

世界全体で食料の供給が需要に追いついていない。事態はかなり深刻だ。一部の新興国では食糧危機の発生懸念が高まっている。パキスタンでは食料不足の深刻化に国民の怒りが高まり、政権交代が起きた。食料不足、食糧危機は世界的な問題だ。

今後の展開として、世界的に食料の価格はさらに上昇する可能性が高い。ウクライナ危機の長期化懸念はその要因の一つだ。穀物の供給が落ち込むことに加えて、肥料の不足も長期化する恐れが高まっている。異常気象によって農作物の生育停滞が深刻化するリスクも上昇している。世界全体で食料のサプライチェーンがどのように修復され、安定するかは見通しづらい。

その一方で、中国やインドなど多くの人口を抱える国は国民の安心できる生活のために穀物などの備蓄を拡大しなければならない。世界全体で食料品の価格はさらに上昇し、食料危機に直面する新興国は増える展開が懸念される。わが国の物価にはさらなる押し上げ圧力がかかるだろう。

コストプッシュ圧力に耐えられず、価格転嫁が続出

わが国の物価が上昇している。物価を示す経済指標には、川上(企業間の取引)の価格の推移を示す企業物価指数と、川下(消費者が支払う)価格の推移を示す消費者物価指数の2つがある。

まず、企業物価の推移を確認すると、2020年12月の変化率は前年同月比でマイナス2.2%だった。その後、2021年6月に同プラス4.9%、2022年5月に同プラス9.1%と、企業物価指数は勢いよく上昇している。同じ月の消費者物価指数(総合)は同マイナス1.2%、マイナス0.5%、プラス2.5%だ。

昨年春の携帯電話通信料金の引き下げ効果が剝落したことに加えて、世界的なモノとサービスの価格上昇を反映し、徐々に消費者物価も上昇している。状況としては、コストプッシュ圧力に耐えられなくなった企業が急増し、価格転嫁が加速している。