世界中で“石炭の争奪戦”が激化している

6月に入り、中国では猛暑によって河南省などで電力の需要が急増し、電力の供給不安が高まっている。昨年9月、中国では石炭の不足などによって電力の供給が落ち込み、経済に大きな制約が生じた。習近平政権は脱炭素に対応するために削減した石炭生産を再開し、輸入も増やした。

中国の習近平国家主席(=2022年3月11日、中国・北京)
写真=AFP/時事通信フォト
中国の習近平国家主席(=2022年3月11日、中国・北京)

それでも電力供給の不安解消は容易ではない。わが国でも液化天然ガスなどの価格上昇と円安の影響によって電力価格は上昇し、事態の厳しさは増している。

中国の電力供給不安の高まりは共産党政権の経済運営だけでなく、世界経済にとっても無視できないリスク要因だ。短期間で中国が電力の需給逼迫ひっぱくを解消することは難しい。中国は洋上風力発電のための大型風車を増産し再生可能エネルギー由来の電力供給を急ピッチで強化しているが、依然として電源構成の6割が石炭火力発電だ。

他方で、ウクライナ危機をきっかけとする資源価格の高騰やロシアからの天然ガス供給減少に対応するために、ドイツは石炭火力発電を拡大せざるを得なくなった。世界各国が石炭を争奪する展開はより鮮明となるだろう。中国と同様に、わが国でも電力供給不安が一段と高まる展開が懸念される。

オーストラリア産石炭を打ち切り、他国でまかなうはずが…

中国で電力供給不安が高まる背景には石炭の不足がある。コロナ禍が発生する以前から共産党政権は大気汚染問題の解消や過剰供給能力の削減のために石炭生産を削減した。その中でコロナ禍が発生し、中国の石炭調達状況は大きく変化した。

特に、オーストラリアが新型コロナウイルスの発生源に関する調査を行う必要があると主張したことは大きかった。共産党政権は対抗措置として豪州産石炭の輸入を停止した。その時点で、インドネシアやロシア、モンゴルなどからの石炭調達を増やすことによって火力発電などに必要な石炭を確保できるとのもくろみが共産党政権にあっただろう。

しかし、2021年夏場あたりになると状況は一変した。デルタ株の感染再拡大によって世界各国でロックダウンや外出の制限が実施され、動線が寸断された。世界全体で物流がまひし、中国の石炭輸入はより大きな制約に直面した。共産党政権はエネルギー供給の減少に危機感を強め、炭鉱を再開するなどして石炭をかき集め始めた。